他に経験もなく、比べようがないけど「大丈夫です」と小さく。鈍い疼痛は感じていても痛むほどでもない。

すると頭の後ろを大きな掌が掴まえて上向かされ、深く口が繋がった。ずっと散々されていた気もする。でも幹さんのキスは気持ちがいいから。・・・好き。

「このまま帰すつもりはねぇよ」

唇の離れ際、妖しく聴こえた声。一瞬。筒井君の笑い顔が頭の隅を過ぎった。

まさかまた、あのまま帰らずにドアの前に座り込んでるなんてこと。それを自分で打ち消す。応えられなかったのに待つはずがない、あるはずない。心臓が痛んだ。・・・泣きたくなるような罪悪感に締め付けられて。

「・・・何を考えてる」

低い声にはっとして視線を上げた。冷ややかな眼差しに射抜かれて躰が竦む。

「あのボーヤのことか」

答えを呑んだ、どう言えばいいのか惑い。
途端、幹さんの目がすっと細まった。

「・・・そうか。心配するな、一晩かけて教え込んでやる。お前の男が誰なのかじっくりとな」