「で、偶然会ったセンパイとは結局それきり?」

「・・・まあ」

不意打ちでエナの口から飛び出したから、言葉を濁してファジーネーブルを一口。

あの送別会から半月ちょっと。今日は私の誕生会だと、定時の6時に退社して駅近くの居酒屋に連れて来られた。筒井君もあとで顔を出すらしい。ちなみに誕生日はあさっての日曜。前倒しで金曜の今夜になったわけだった。

「運命の再会にはならなかったねー、残念!」

ケラケラと笑ってあっけらかんと言う彼女。

「誰か紹介しよっか?ショウヘイの友達とか」

あのサーファー彼氏の友達・・・・・・。想像しなくても勝手に風貌が浮かんできそうな。その前に相手にされないと思うけど正直に、今すぐ欲しい欲もない。

「そういうのは天からの授かりものって言うし」

「子供か!」

軽快なツッコミを笑って受け流す。

ビジネススクールの時、仲良くなったグループの中に一人、話の合う男子がいて。一緒に映画観に行ったりナントカ展に行ったりしたことがあった。

気が置けなくていつの間にか好きになっていた。自分から告白する勇気はなかったけど、もしされたら、なんて淡い期待を抱いていた。でもある日、彼がグループの他の女子と話しているのを偶然耳にした。

『羽坂?トモダチだよ、ただの。連れて歩く彼女ってゆーのと違うじゃん?』   

それだけで、嫌いだとかって言葉が出てきたわけじゃない。でも恋愛対象にはならないってありありと伝わってきた。単純に地味目な私の外見や、そう明るくもない性格の問題なんだろうと理解した。

あれから足が止まってるというか、敢えて避けてきたというか。