「あ、ここ…?」
ふと発せられた昴の声に、楓ははっとした。
いつの間にか駅までたどり着いていたらしく、見慣れた昭和時代を思わせる外観の駅が目の前にあった。
「うっうん!ここ」
「じゃあ俺、ちょっと琉矢たち…あ、その友達に連絡してみるから」
そう言って昴はポケットからスマホを取り出した。
楓はスマホを操作する顔さえも綺麗な昴を見て、少しドキドキした。
鬼島くんの友達ってどんな人だろう…
私が隣にいても不釣り合いにしか思われないだろうな…
シンプルな黒のズボンと白のシャツ。
着飾っているわけでもないのに、どこか華があって、かっこいい。
白いシャツから伸びる少し焼けて色をしている腕は、ゴツゴツもしていなければ、ガリガリなわけでもなく、少し力を入れた時に浮き出た血管がなんとも言えないくらいに色っぽくて、綺麗。
それに比べて私は…
楓は自分の地味な服装を上から下まで眺めて、ため息をついた。
相手は国民的大スターだ。
比べること自体おこがましい。
そんなことを考えていると、シャーと言う音とともに電車が到着した。
「お、この電車だ」
昴は小走りになって駅の改札口へ向かって行った。
