「さ、私も参加させてもらえることになったし、森本のおじいちゃんの手伝いしてこないとっ!」
楓は気合いを入れて立ち上がると、森本のおじいちゃんのもとへ走って行った。
「森本のおじいちゃ〜ん!」
楓は裏の蔵に向かうと、そこに見慣れた背中を見つけた。
「おお、楓ちゃん。どうしたんじゃ?」
森本のおじいちゃんは曲げていた腰を伸ばすと、楓の方に振り返った。
「なにか私にできることある?物運ぶのとか、できることあったら私、やるよ」
そう言うと、森本のおじいちゃんはにっこり笑って「気にしなくていいんじゃよ」と言った。
「それに、楓ちゃんには恩があるからね」
「え、恩?」
楓がきょとんとして訊き返すと、
「昴に言ってくれたんじゃろう?わしが昴のことをいつも楓ちゃんに自慢してるって」
森本のおじいちゃんは気恥ずかしそうに頬を染めてそう言った。
「あ、バレちゃった?」
楓はへへっと苦笑いをした。
まあ他にそれを言う人なんていないからバレるのは当たり前なのだろうけれど…
「ありがとう、楓ちゃん」
森本のおじいちゃんの手が、楓の頭の上にそっと乗った。
温かくて、優しくて、大きな手。
そんな手に楓はほっとして、森本のおじいちゃんににっこりと笑いかけた。
