教室の扉に手をついて息を整えていると、後ろから気配を感じた。
振り向くと、転校生の鬼島昴がいた。


「あのさ、どいてくれない?教室、入れないんだけど」


冷ややかな声で言われ、ドキッとしたが、なんとか道を開ける。


「ご、ごめんなさい…」


昴は無言で入っていくと、さっさと自分の席に座った。始業式から席替えをしたにも関わらず、なんたる運か、再び隣になり、逆に恵とは離れてしまった。絶望する楓をよそに、
一方の恵は意中の相手、凪と席が近くなり嬉しそうにしていたが…


教室には、楓と昴だけ。
隣とはいえ、特に喋ったこともなく、相手は国民的大スターの鬼島昴。当然緊張する。


楓も席について鞄を片付けていると、突然声をかけられた。


「ねえ、白浜さん部活に入ってないの?」


「え?」


思わず聞き返してしまったが、ドキドキしながら答えた。