楓は走っていつもの「秘密の場所」へ向かっていった。
整備されたコンクリートの道を抜けて、ぐんぐん進む。
だんだん道が狭くなっていき、太陽の光も薄くなっていく。
そして、大人一人がしゃがんで入れるくらいの、ポッカリと開いた、少しぬかるんだ道へ入った。
周りは誰もいなくて、上を見上げると、大きな緑のカーテンと高い黄緑色の天井に覆われており、太陽の光がチラチラ見え隠れしている。
近頃は暖かくなってきたため、鮮やかに木々が彩られ始めており、気分がウキウキする。
しばらく進むと、浅瀬の小川が現れる。
水面がキラキラ反射していて、中の小粒な石もキラキラしている。
また、進む。
だんだん視界が広がっていき、大きな大きな丸い岩を中心とする、緑に覆われた自然のホールが現れた。
「スゥ……」
楓は大きく深呼吸をして、周りの空気を体いっぱいに取り込んだ。
美味しい、森林の味がした。
春らしい、甘くて柔らかな匂いも。
ホーホケキョ
ウグイスの鳴き声がどこからか聞こえてきた。
楓は表情を緩めた。
柔らかい、爽やかな風が楓の頬を撫でる。
