煌めいて初恋


「わ、分かったから…。
でも、プライバシー云々があるから家とか分かんないだろうし、迷惑だからダメだよ。」


釘を刺すと、母は残念そうに肩を落とした。


「まあそうよねー。楓、隣の席なら仲良くなって連れて来なさいよ」


「無理無理!仲良くなるとか無理〜〜」


慌てて手を振ると、母はお願い、と手を合わせてきた。


「無理なもんは無理なのー!
早く弾きたいからどいて!!」


母を無理矢理押しのけると、後ろから抗議の声が聞こえてきたが、楓は構うことなく鞄を持って自分の部屋へ入った。


自分の部屋に入ると、カバンをベッドにほうりだし、さっさと制服を脱ぎ捨てて、ハンガーにかけた。
近くにあった7丈袖の白いカットソーに、袖口が広がるタイプの黒いズボンを着た。
そして勉強、ではなく、ヴァイオリンの形をしたハードケースを持って早々に部屋を出る。