「…は?」
母の動きがピタリと止まって、つまんでいたせんべいをポロリと落とした。
「あー、もったいなーい」
楓が肩を落として、母の落としたせんべいを拾うと、しばらく固まっていた母がワナワナと口を震わせた。
「…ね、楓。もう一回言って…?誰が来たって?」
「え?だから、鬼島昴だって。お母さん知って…」
「本当なの!?」
楓が怪訝そうにしていると、母は勢いよく楓の肩を揺さぶり出した。
「ね、今鬼島昴って言ったわね?ホントなのね?鬼島昴なのね!?」
「だからそう言ってるじゃん」
楓がたじろぎながら頷くと、母は乙女みたいに目をキラキラさせて、熱く語り出した。
「鬼島昴くんはね、すっごいイケメンなのよ!イケメンに疎い私でさえカッコいいって思うくらいなのよ!
歌も上手でカッコイイし、その上すっごいいい子なの!!
あ〜、一回でいいから会ってみたかったのよねー」
