「えっ、ちょっとそれどゆこと!?」


誰もいない教室に恵の動揺が広がった。


「ちょっ、ちょっと恵っ…声、大きいって」


人もいないのに、何故かいたたまれない気持ちになり、楓は「しーっ」と人差し指を唇に当てた。
と、恵もそれに乗じてか顔をグッとこちらに寄せてきた。


「ちょっと、えっ!何、どゆこと?え?鬼島昴のことがすっすっすっすすすす好き⁈ほんとに⁈ほんとなの?」


動揺に動揺といった様子の恵に赤くなりつつ、楓は照れ隠しにそっぽを向いた。


「ほっ、ほんとじゃなかったらこんな話しないよ。てか鬼島くんに恋してるんじゃないって言ってきたの、元はと言えば恵からじゃん!今更動揺しないでよ、もお」


暑い。いや熱いか。


そんな楓を見て、恵はくっと笑った。


「いや〜確かにね、ん、そうだわね。私から言い出したことだけど、うん、やっぱ驚くものは驚くんだわね。それは分かって?ごめんね。けどこれはどういう心境の変化?朝の時には私が言っても動揺してて、自覚にはまだ全然って感じだったよね?やっぱなんかあった?錦川姫李に呼び出された時?」


恵は目を爛々にして問い詰めてきた。
その勢いは何というか、獲物を狩る虎みたいでこちらは逆に狩られそうになっているうさぎになった気がした。