昴と話そう。
どうしてこんな思考に陥ったのか分からないが、楓は混乱した頭のまま周りのざわつきも無視し、ズンズンと大股で教室へ向かった。
そして…
「白波さん、おはよう」
昴はなんてことないという表情で、能天気な挨拶をぶちかました。
「お…おは…よ」
楓はなんだか一気に肩の力が抜けた気がしてきていた。
周りは当人たちの心情なんか知る由もなく、どよめいている。
「あのさ、昨日のこと…」
楓はドキドキと鳴り響く心臓をなんとか静ませて、本題に切り出した。
「ああ、なんだか噂になってるね」
昴はけろりとそう言った。
まるで、それがどうしたと言わんばかりに。
楓はあんぐりと口を開けた。
周りの生徒たちもこれにはどっとどよめいていた。
「あ…いや、そのお…」
昴に何を言うべきなのか、どうするべきなのか、何を伝えようとして昴の前に来たのか…
楓はだんだん、自分のしようとしていた、言おうとしていたことが馬鹿らしく思えてきた。