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「………美しい」
ものの10数分後には、ルビアは剥製と化していた。
彼女は美しすぎる程に美しく、青い花の咲いた肌はそのままであった。
しかし、その胸部には、それまでの小花とは比べ物にならない程の大きく、綺麗な青い花が咲いていた。
まさに、生物の”心臓”に当たる部分。
「彼女に咲いていた花は、”サルビア”でした。まさに、彼女の名前に相応しい」
店主は本棚から取り出した植物図鑑を老夫婦に見せる。
そこにあったのは、棒状に伸びた赤や青の花。
ルビアに咲き誇ったあの青い花と同じ形であった。
「…花は、人の心を写すものと言われます。……サルビアの花。花言葉は、『家族愛』」
その言葉を聞いた老夫婦の目から、静かに雫が滑り落ちた。
その雫は机に小さな小さな水溜まりを作っていく。
「……あの子は、私達を愛していてくれたのですね。本当に、良かった…」
「最後に、あの子の気持ちが分かれて良かった。君には本当に感謝しかない」
ハンカチで目を抑えた老夫婦に、店主の少年は優しく微笑みかける。
「ご来店、ありがとうございました」
