「こんにちは」



静かに店に入ってきたのは、黒い服を身にまとった、上品な老夫婦であった。



「いらっしゃいませ。どのようなご依頼でしょうか」



アンティーク調の家具の並べられた店内から聞こえる、愛想の良い少年の声。



店の奥から現れた小さな少年が、この店の店主だ。



「……この店は、どんな生物をも剥製にできるとお聞きしまして」



「娘を…剥製にしてほしいんです」



老婆が手に抱えていたお包みには、2歳ほどの少女の遺体が包まれていた。



その少女の頬や腕の至る所に、小さな青い花が咲いている。



「……植物病の1種でしょうか」



「その通りです。娘──ルビアは、原因不明の植物病で亡くなりました」



ルビアというまだ小さな少女は、頬の赤みこそ消えてしまったものの、生きていれば大層明るく可愛らしかったであろう顔立ちをしていた。



ほんの少し笑みを浮かべたようなその顔は、眠っているのでは、とも思えるようだった。



「…可愛らしい娘ですね」



「……本当に」



老爺が重い口を開いた。