「カイル、ネクタイが結べてないわ」

そう言いオズは椅子から立ち上がった。エメラルドのブローチをつけた深緑のワンピースのスカートが揺れる。

「おいら、こんなこともできないんだ。勉強なんてもっとできないのに着替えもできないなんて……」

ネクタイをオズが結び直してあげると、カイルは暗い表情になる。カイルはオズの授業で陽気に歌い、いつも明るく楽しそうにしている。こんなカイルを見るのは初めてだ。

「誰かに何か言われたの?」

オズは優しくカイルの手を取り、訊ねる。カイルはフッと笑って「いつものことさ!」と言った。

「おいらはカカシ。脳味噌はスカスカで知恵がない。だからいつもみんなに馬鹿にされている。でも、おいらはみんなの道化だから笑わなきゃいけない。それが最近は辛くなってきて……」

カイルは静かに涙をこぼし始めた。オズは立ち上がりカイルの背中を優しくさする。そして最近音楽の授業で観たミュージカルで登場した歌を歌ってみる。