「百叶、宮藤さん、そろそろシフト交代していいよー」

「っあ、は、はい…っ」

「わかったー、じゃあ柚、私着替えてくるね」

「う、うん…!」




いよいよやってきた文化祭。


昨日、今日と、私のクラスのメイド執事喫茶はそこそこの混み具合だった。一気に来ることはないものの、用意した席は、常にお客さんで埋まっている。


シフトは午前と午後で分かれていて、私と百叶は午前中のシフト。

時刻は12時を少し過ぎたところ……私は小さく息を吐き、ゴム手袋を外した。



あの日、衣装係のみんなに当日のメイドを勧められたけれど、あの一件もあって、私は何とかそれを逃れて調理補助に回っていた。

百叶はというと、私念願のメイドに抜擢され、忙しそうに教室内を歩き回っていた。



隅のテーブルに置いたペットボトルを手に取り、お茶を喉に流し込む。

開始してからずっと水分を摂れずにいたので、喉はとっくにカラカラだった。




「柚、お待たせ、行こ」

「…あ、うん…!」


早くも着替え終わったらしい百叶が、裏にひょいと顔を覗かせて私を呼んだ。




「…どうする?どこか気になるところとかある?」

「…う、うーん…」


廊下に出ると今日は一般公開もしているためか、昨日に比べてかなりの人。

どこを見ても人の波で、どこで何をやっているのか全然見えない。



「……ゆっくり物色して…ってできる感じじゃないね、一旦、人少なそうなところ行こっか」

「う、うん、そうだね…」


人の隙間を縫うようにして廊下を進み、何とか、比較的人の少ないホールにたどり着き、足を止めた。



「……柚、お腹空かない?」


言いながら、百叶は手に持っていたA5サイズの薄ピンクの紙をまじまじと見る。各クラスの出店の詳細がまとめられたものだ。


「…あ、そうだね、百叶の食べたいもの…」

「…あ!」