「…あ、あの、警察って…」
恐る恐る訊くと、その人は一瞬、何のことかわからないような顔をした。
けれどすぐに、ああ、と少し笑った。
「呼んでないよ。あの人たち追い払うための嘘」
「…う、嘘……」
「大丈夫、安心して」
そう言って目尻を下げたのを見ると、根拠はないけれど何だか本当に安心していいような、そんな風に思えた。
警察呼んだっていうのは、嘘だったんだ………
でも、それにしても、あの場面で咄嗟にあんなことできるなんて………
すごい人に助けてもらえたんだ、私………
「友達と一緒?」
「…あ、はい…」
「っあーいた!!朝井おまえ急にいなくなんなよビビったわ!」
「っ、!」
突然声がして、すぐにバタバタと足音。
「あ、ごめん」
集まってきた男の人5人に背中を叩かれながら、その人は数回謝った。
……この人たちも、みんな背が高い…
「おまえなんでこんなとこに」
「マジで探したわ」
「てかこの子誰?」
そのうちの1人が私に気づいて、目が合った。思わず、目が泳ぐ。
「え、もしかしてナンパ?」
「朝井マジで?おまえそういうことするタイプだっけ?」
「違うよ、違う。困ってそうだったから…」
「うーわ怪しいその言い方!」
異様に盛り上がりを見せる男の人たちに、呆然と立ち尽くすだけの私。
「…じゃあ、気をつけてね」
「……あ、はい、あ、ありがとうございました……!」
「ちょっ、おい朝井っ、話はまだ終わってねーぞ!」
半ば強制的に話を終わらせたその人は、柔らかな笑顔を見せると颯爽と行ってしまった。
………な、何だったんだろう、今の………
その人の後ろを慌てて追いかけていった5人をぼーっと見ながら、私はベンチに座り直した。
……でも、よかった、助けてもらえて。
私1人じゃ何もできなかったし……