「何してんですか?」

「っ、!」


引っ張られていたのと反対の腕を掴まれる感覚がしたあとすぐに、後ろから声が聞こえた。

振り返ると、黒い短髪の男の人が、私の腕を掴んでいた。

その背は高く、思わず見上げてしまうほど。自称大学生よりも、頭1つ分以上高い。


「おまっ、ダレだよ!」

「そちらこそ。彼女怖がってるじゃないですか」


思い切り睨みつけられるも全く動じないその人は、落ち着いた口調でそう言った。


「ハァ?怖がってねーだろ!ホラお姉さん早く行こうぜ」

「っ、」


さらに力を込められた手で腕を引っ張られ、痛みに思わず顔を歪めた。


「警察、さっき呼びました。もうすぐ来ると思いますけど…」

「っはあ!?」


警察、という言葉に、3人は一瞬動きを止めた。

私の腕を掴んだまま何やら話し始める。かと思ったら、すぐに腕が解放された。


「ったく、ジャマしやがって…」

「いーだろ別に、あれくらいのレベルなら他にもたくさんいるって」


3人はそんなことを言いながら、あっという間にその場を離れていった。



「…あの、大丈夫ですか?」

「…っあ、あ……」


思わず膝から崩れ落ちそうになったのを何とか持ち堪えて、その人を振り返った。


「…あ、あの、ありがとう、ございます……」

「いいえ、どういたしまして。怪我ない?」

「は、はい…」


それならよかった、と初めて表情を崩したその人は、笑うと少し幼く見えた。