午後の部の競技も次々と行われていった。


私は変わらず座ったまま百叶たち3人と一緒に、ただ競技の様子を見ていた。



「百叶、柚ー、チョコ食べる?」

「え?いいの?」

「いいよー」

「あ、ありがとう…!」


はいどーぞ、と個包装されたチョコレートを、玲可ちゃんが手のひらに載せてくれた。


……あ、けど私、お菓子何にも持って来てない…………何かお返し……………できるもの………



「……あ、私、ちょっと購買、行ってくる」


そう言って立ち上がると、百叶が私を見上げた。


「え、どうしたの?」

「玲可ちゃんに、お菓子のお返し買ってこようと思って」

「え」


百叶と同じように私を見上げていた玲可ちゃんが、短く声を発した。


「え、いいよ柚、気にしないで」

「え……で、でも…」

「いいのほんとに、お返しもらう目的であげたんじゃないし」


ね?と私の腕を引っ張り、座らせた玲可ちゃん。


「……わ、わかった……ご、ごめんね、何も返せなくて……」

「だからいいんだって、気にしないでよそんなにー」


玲可ちゃんはそう言うと、私の背中をとん、と叩いた。



「…あ、え、あれ、成瀬くんじゃない?ねえ」

「…え?」


不意にまりなちゃんがグラウンドを指差した。

その声で、私たち3人はその指の先を目で追った。



「……わ、ほんとだ、まじで?成瀬くんああいうの1番嫌がりそうなのに」

「ね。宮城くんがさっき言ってた可愛いとこあるって、ああいうことなのかな?」

「……さあ、どうだろう、てか可愛いかあれ?」

「びみょいね」



競技はただいま借りもの競争中。


まりなちゃんが指差した先にいたのは、次に順番が回ってくる成瀬くんだった。

いつものように感情はあまり読み取れないけれど、強いて言えば、面倒くさそうな感じだった。


…確かに成瀬くん、ああいう競技苦手そうなのに………