「や〜すごかったよ2人とも!」
「速いじゃん、びっくりした」
「そ、そうかな?」
「わ、私は、たまたま…」
開会式が終わるなりすぐに指定の場所に招集され、息つく間もなく気づけば100m走のスタートを切っていた。
必死に足を動かして、走り切ったゴールの先で〈3位〉と書かれた黄色い小さな紙を渡された。
先のグループで走り終えていた百叶はゴール付近で待ってくれていて、2人で一緒に、まりなちゃんと玲可ちゃんのもとに戻ることに。
戻りながら百叶の順位を聞いたら、2位だった、惜しかったーと少し悔しがった様子で、私に黄色い紙を見せてくれた。
「てかうちらの応援届いた?めっちゃ叫んだんだけど」
「え……ごめん、気づかなかった…」
百叶はタオルで汗を拭きながら、本当に申し訳なさそうな顔でまりなちゃんを見た。
「だから言ったじゃん、たぶん聞こえないよって」
「思いが足りなかったのか〜…」
再び項垂れるまりなちゃん。
「ごめんごめん、ありがとね!私も2人が出る時応援するから」
「ありがと百叶〜〜」
「てかまりな呼ばれてない?200出る人ーって」
「やだ行かなきゃ」
じゃあ1位取ってくるわ〜!とガッツポーズを作ったまりなちゃんは、颯爽とグラウンドへ走って行った。
まりなちゃんは宣言通り、1位を取って戻ってきた。
「まってよ、かっこよすぎるんだけど」
「すごい速かったね…!」
「うん、まりなちゃん、誰よりも速かったよ…!」
「やだも〜そんな言われると照れる〜〜」
にっこり笑ったまりなちゃんは〈1位〉と書かれた紙を見せてくれた。
「あとは玲可だね」
「あたしはいいよー、みんなみたく速くないから」
「土屋応援団長で、この3人でめちゃくちゃ応援するから!ね!」
そう言うとまりなちゃんは、私と百叶の肩をぽんと叩いた。
「うん、頑張れ玲可…!」
「玲可ちゃん、応援してるよ…!」
百叶と私が続けてそう言うと、玲可ちゃんは少し照れくさそうにしながらも、ありがとう、と笑った。


