挙手制は苦手。私はこれがいいです、とはっきり示さなきゃいけないから。
勇気を出して手を挙げても、その結果被ってしまったり、枠に対して人が溢れてしまったりすることがほとんど。そうなると、誰かがそこを譲らなきゃいけなくなる。
だから私はいつも、率先して譲る人になった。
揉めるのはいやだし、私のせいで誰かが諦めるのもいやだった。
そのうち私はいつからか、みんなが選びそうな人気そうなものを避けて、余りそうなものの方に手を挙げるようになった。
ケンカになるくらいなら、私の希望なんてどうだっていいと思った。
自分のしたいこと、好きな方をはっきり表すことをしなくなった私は、いつもこの流れになるとすぐに、みんなが選ばなそうなものはどれかを考えるようになっていた。
「……じゃあそろそろいいかな。そしたらまず100m走出たい人挙手ー」
100m走は人気だと思ったので手を挙げなかったけれど、そっと周りを見てみる。
百叶が挙げているのが見えた。……けれど、枠8人に対して、挙げている人数はそれを下回っていた。
あ、もしかして今、私手挙げれば………
「……5人ね。じゃあ次、200m走ー」
迷った一瞬で、先生は次の種目に移ってしまった。
次々と進んでいき、いよいよ、私が手を挙げるべき種目の番が来た。
「……じゃあ次、綱引きね、出たい人ー」
恐る恐る、手を挙げた。
……どうか、多くありませんように………
「……えー少ないね、3人?」
知らずのうちにぎゅっと瞑っていた目をそっと開けた。
先生の声に、心の底からほっとしている自分がいた。よ、よかった……………
教室を見てみると、百叶も手を挙げているのが見えた。
や、やった………百叶と一緒だ………!


