勉強合宿(学年交流会)の成果が問われる学力試験は何とか無事終了。
そんなクラス内は、少しずつ浮き足立っていた。
その理由はーーー
「やっとだね!もう超楽しみなんだけど!」
「まりな何出たいの?」
「あたしは200mかな〜〜」
「え、短距離がいいなら100でいいんじゃん?」
「100じゃダメ、すぐ終わっちゃうから」
「ナニソレ」
ーーーそう、高校に入って初めてのイベント、体育祭が近づいているから。
昼休み、百叶の席にいつもの4人で集まってお弁当を食べながら、まりなちゃんはキラキラと目を輝かせながら玉子焼きを口に入れた。
今日の6時間目に体育祭の種目決めをするからと、朝のホームルームで担任の予告があった。
それで昼休みみんなで集まるなり早速、まりなちゃんが口を開いた。
「やっぱさ〜、中学とは規模違うよね!?リレーとか超盛り上がりそうだし、何か応援団パフォーマンスとかあるっぽいよ!?」
「ええそんなのあんの?すごそう」
玲可ちゃんは驚いたように眉を少し上げた。
「迫力とかやっぱすごそうじゃない?めっちゃカッコいい先輩見つけちゃったりして」
「まりなが楽しみなのって本当はそっちメインだったりして。面食いだし」
「しっつれいしちゃう、あたしだって200で1位取る気でいるんだからね?」
「面食いは否定しないんだ」
ーーー『おまえ、見ててムカつく』
私の胸には、交流会の夜に言われた言葉がまだ刺さったままだった。
あれ以来これといった接点は全くないし、話しかけることはもちろん、話しかけられることも一切ない。
それがどうってことはないんだけれど、何だかずっと、胸の隅に残っていて、モヤモヤしていた。ずっとささくれがあるみたいで、時々ピリッと痛むことがある。
………ムカつくって言われたし、やっぱり私、無意識のうちに、成瀬くんにあそこまで嫌われるほどの何かをしてしまったということだ……
いつも周りの空気を感じることができるのに、どうして、今回に限って失敗してしまったんだろう……初対面の相手には絶対に失礼のないようにって、もうずっと私はわかっていたはずなのに。