恐る恐る自分の席へ近づく。
…隣のその席には、すでにその人の姿があった。
浅く腰掛けた彼の脚は、前方に投げ出されるように伸びている。腕組みをしながら、視線は窓の外に向けられていた。
その横顔から感情はあまり読み取れないけれど、強いて言えば、気怠そうに見えた。
………ど、どうしよう……………
窓の外見てるのに、その前を横切って着席なんかしたら……………
…これ以上嫌われたくない……けど、席には座らなきゃいけないし……………
…………しゃがんで、視界に入らないように椅子の横まで移動して、そこからそっと着席したら、まだマシかな……………す、少なくとも、視界には極力入らないようにしてるし、窓の外の景色の邪魔もしてないはず…………よし………っ
「何してんの?」
「ひっ、」
意を決してしゃがみかけたら、誰かに声をかけられて思わず動きが止まった。
恐る恐る、その方に目を向けた。
声の主は、私をじ、と見ている。その鋭い視線に、私の体はどんどん強張る。
「そこ突っ立って何してんだって訊いてんの。鬱陶しいんだけど」
う、うっ……鬱陶しい……………
前回言われた、うざい、よりもさらに鋭い言葉が私の胸をえぐった。
「………も、申し訳ありません………」
「………」
前回同様、返事はない。
「座んねーのかよ」
うざ、と言葉をこぼして、成瀬くんは机に突っ伏してしまった。
…も、申し訳ありません……………
私は心の中でもう一度謝罪してから、音を立てないように着席した。
私の心臓はバクバクと音を響かせていて、口の中もカラカラに乾いていた。
………さらに嫌われてしまった気がする…………のは、気のせいじゃないはず………
初日からいきなり地雷を踏んでしまったのか、成瀬くんは私に対する不快感を隠しきれないようだった。
私も、この2泊3日の体力を今ので全て使い果たしてしまった気がした。


