まりなちゃんに連れられて人の多い大通りを抜け、1本裏道に入ったところにその美容室はあった。
まりなちゃんの一言にみんな乗り気で、私は断る間もなく着いてしまった。
「こんにちは〜…って、何でまりな?」
「やっほ〜」
カウンターで作業をしているきれいなお姉さんがこちらに気づいて笑顔を向けてくれたけれど、先頭にいるまりなちゃんに気づいた途端、その表情は一気に驚きへと変わった。
「ナニ、どしたの急に」
「今暇?友達の髪切って欲しいんだけど」
「暇って…あたし一応仕事中なんだけど」
「前髪だけでもいいから!ね、お願い!」
「……」
強引なまりなちゃんに、お姉さんはそれ以上何かを言うのを諦めたのか、カウンター上のノートパソコンを操作して何かを確認する。
「…ん、次のお客さんの予約まで少しだけ時間あるから、前髪くらいなら切れるよ」
「ほんと?ありがと〜!じゃ、柚!行っといで!」
「えっ、あっ…」
目を輝かせたまりなちゃんに背中を押され、お姉さんの前に一歩出る。
長い髪を後ろに1つにまとめ、毛先はゆるくカールしていて、近づくと何だかいい香りがした。
まつ毛がきれいに上を向いた目が私を捉えると、同性なのにドキッとした。
「っあ、あの…1年前から、まりなちゃんのクラスメイトをさせてもらっています、宮藤柚と申します、あの、今日は急にごめんなさい…」
「ナニそれ〜結婚の挨拶みたいね」
「けッ、えっ?」
「まりなとお友達は、その奥の椅子のところで待ってて」
は〜い、とまりなちゃんたちの返事を背中に、私はお姉さんに連れられて鏡の前に座った。


