唇が離れると、


「南央さん。俺と付き合って」


そう言われた。





これ以上は心臓がもたないため、頷くことしかできなかった。


「ねぇ南央」





!?



呼び捨て…


ばっと顔をあげる


「やっとこっち向いてくれた」


敬語ではなくなった彼の顔は、幼さが残るような笑顔で笑った。



「俺は入社した時から南央さんのことが好きだった。でも南央さんは俺のことをただの部下としてしか見てないことはすぐに分かったよ。
それに俺の知らないところで、俺が遊んでるって噂が勝手に広がっていて、めんどくさいからそのままにしてて」




えっ…?


「でも、松本さんの友達は、あなたに抱かれたことがあるって」


そう言ってた。



「あー、多分それはね。僕だって会社の人と飲みにはいくよ。その時に、変な女の人に捕まっちゃってさ。全然離れてくれなかったから、ホテルに連れて行ったんだ。
その人はホテルに着くなり寝てしまって、めんどうだったからそのまま置いてきたら、次の日、昨日はありごとう、だなんて言われてさ。多分そのことだと思うよ。勝手に相手が勘違いしてるだけだよ」