「なおっ…⁉︎芹沢さん」
オフィスを出てエレベーターを待つエントランスで、新が私の名前を焦って言い直して呼ぶ。
「どうしたの？金木くん」
「あのっ…いや、何でもないです」
何かを言いたげだったが、新はそれを辞めた。
タイミングが良いのか悪いのか、エレベーターが来たため乗り込む。
ドアが閉まる向こう側の新は心配そうに私を見つめている。
もうっ！
ドアが完璧に閉まる直前に、“開”のボタンを押し、エレベーター前で立っている新の手を引き、“閉”のボタンを押した。
「どうしたの」
いきなりのことで驚いている新を他所に、今しか話す時間がないため、私は話を進める。
「その…」
新が口を開くのを待ち
「今日、南央さんが行く支所というか、販売店、俺の元カノが働いているところの販売部なんです」
⁉︎
えっ
「そうだったの⁈」
今まで全く知らなかった。
