イケメン従者とおぶた姫。

ガチャッ!

キカの部屋のドアが開いた。

キカの元カレは、キカが出て来たと思い喜んだのも束の間、サ…っと血の気が引いた。

何故なら、そこには
180cmあろうか魔法衣を着た長身の男が立っていたからだ。
しかも、顔を隠すように深くフードを被っているので何だか不気味で怖く感じる。

ロゼの見た目の威圧感で、キカの元カレは引き腰になっていた。


「…え?…え?え?」

ロゼから見たキカの元カレは、なかなかのイケメンでとても真面目で誠実そうに見えた。

ロゼは、元カレをギロリと見下ろすと


「さっきから、意味分かんねーふざけた事喚いてたのはお前か?」

と、威圧感たっぷりに声を掛けた。

そして、より怖さを出す為にサクラの喋り方を真似てみた。もちろん、ショウ以外に見せるダークサクラの真似だ。

深くフードを被っているせいで顔はしっかりとは見えないが、フードの中からたまにチラリと見える目や鼻筋で相手がかなりの美形だという事が分かった。
そして、フードで隠れきれてない口や顎を見てもそれは感じ取れた。

それに、魔法衣に身を包んではいるがモデルのようにスタイルがいい事も分かる。

…全体的に美丈夫といった感じだろうか?

とても、強そうに見えるので力では到底敵いそうにないのは一目瞭然だった。
あと、魔法衣を着ているという事は魔法が得意でその筋の人だという事も容易に想像できる。

元カレは、圧倒的ロゼの存在感に怯んだが


「あ、あんたこそ、誰だよ!?ここは、キカの家だろ?なんで、あんたがいるんだ?まさか、不法侵入か!?
…キカッ!大丈夫か!?今、警察呼んでやるからな!」

と、救世主の如く元カレが、携帯を手に取ったのだが


「…ああ。お前、キカが言ってたストーカーの元カレか?」


ロゼが、そう言ったところで元カレは、ギッとロゼを睨みつけたはいいが…ロゼが怖くて、

「…ヒ…!」

と、すぐさま怯み尻込みしている。それくらいなら、早く帰ればいいのに。

おそらくだが、この場から逃げ出さず立ち向かう俺を見ろ、と、キカに頼れる男・男気アピールをしているのだろう。


「は?ストーカーじゃないし!俺は、キカと将来を誓い合った彼氏だ!」

なんて、ほざいてきた。

それに対し、ロゼは


「ハハッ!ウケる!!」

と、元カレを馬鹿にしたように手を叩いて笑った。それに、カチンときた元カレは


「…な、何がそんなに、おかしいんだ?」

足をガクガクさせながらロゼに聞いてきた。


「いや。だって、お前…浮気してキカの事振ったんだろ?別れたんだよな?」

と、ロゼが言うと

「…そ、そうだけど…。…でも、俺はミミに騙されてて…」


なんて言い訳してきた。


「騙されたから何なわけ?お前が浮気して、キカと別れたんだよな?

“気が強い”

“可愛げがない”

って、散々キカを傷つけて捨てたくせに。

よく被害者面して、キカの前に現れる事ができたな。面の皮厚すぎね?馬鹿なの?屑なの?ゲスなの?」


「…けどっ…!俺は、キカの大切さに気づいて…!俺、キカの事が好きなんだ!」

「今さらだろ。それに、キカとお前は別れてるんだから他人。それにキカはお前の事、好きでもなんでもないんだから、お前のその気持ちは一方的な片想いに過ぎない。

聞けば、キカはお前とは付き合えないってハッキリと断ったらしいな。
なのに、お前はキカの気持ちや言葉はまるで無視。自分の都合のいい妄想ばかりを押し付けてくる、しつこく付き纏う立派なストーカー化したと。気持ちワリー。」

「…か、片想い…?…す、すストーカーだと…?そんなわけない!キカ!キカ、いるんだろ?」

ロゼは、元カレの矛盾した言葉一つ一つに丁寧に対応し、元カレ自身おかしい事を言っている事に気付かせようと試みていた。

こればっかりは、しっかり自覚させ認めさせなければ解決に繋がらないと思ったからだ。

そして、遂に追い込まれた元カレは、キカに助けを求めたのだった。

ロゼは、部屋の奥で様子を見ていたキカに目配せをし、それを見たキカは覚悟を決めたようにコクリと頷いた。


「いいぜ?確認してみろよ。ストーカーヤロー。」

ロゼは元カレを見下ろしたまま、フッと鼻で笑い


「来いよ、キカ。ここに、恥ずかしい勘違いヤローが来てるぜ?」

と、キカを手招きし、キカがロゼに近づいた瞬間、ロゼはキカの肩や腰近くに手を回し口を耳に近づけた。


…ドキィッ!!!?


少し動けば触れられる位置まで、グッと近づいたロゼにキカはドキドキした。そんなキカの耳元で


「安心せい。ソチに触れはせぬ。
じゃが、ソチの元カレには勘違いさせておいた方がいいと思ってな。しばらくの間、このままで良いか?」

と、小さな声でそんな話をしてきた。

キカは、

…別に触れてもいいのにな…

なんて思いながら、ロゼの声と爽やかでスパイシーな香りにウットリとしていた。

…キカの位置からだとロゼの顔が見えないので残念に思うが、ロゼの固く締まった体にドキドキする。

この腕に、体に抱き締められたらと考えていた所に

元カレ方向からだと、ロゼとキカが抱き合ってるように見えているらしく


「…キカ、お前…浮気かよ!最低だな!」

と、キカを非難する声が聞こえてきた。

その声で、キカはハッと我に返った。
我に返ったが、やっぱりロゼにドキドキしちゃう。

きっと、今の自分は顔中耳までも赤いんだろうなと自覚してるキカだ。実際は耳どころか首までも真っ赤になっているのだが…


「いや。もう、お前と別れてるから浮気じゃねーよ。それに、大ブーメランしてるの分かる?
浮気した最低ヤローは、お前だぜ?」


と、顔だけ後ろを振り返り言ってきたロゼに、元カレは「…グ…」と、言葉を詰まらせそれ以上何も言えなくなっていた。


「それに、キカの優しさにつけ込んで痛ぶり傷つけるなんて、お前は悪魔かDVヤローにしか見えねーよ。
もし、本当にキカの事が好きなら、
キカの事を思うなら、いい加減キカに付き纏うのはやめろ。」

そこに、畳み掛けるようにロゼは言葉を続ける。

「キカにとってお前は、もう過去の人間だ。」

そこまで言った所で、元カレは酷くショックを受けた様な顔をして


「…なあ?俺達…もう、やり直せないのか?…お前にとって、俺は過去の人間なのか?」

と、キカに聞いてきた。

だが、キカは元カレに対し恐怖で頭が真っ白になってしまい、何も言えなくなっていた。

それを察したロゼは、これは不味い。
今が正念場なのに、このままではまた元カレの中でいいように脳内変換して

また、同じ事の繰り返しになると危惧した。

なので


「…大丈夫だ。自分が思ってる事をそのまま伝えればいい。」

頼む!何とか言ってくれ!!と、願う気持ちでキカに声を掛けた。

すると


「…わ、私…無理…」

「…は?」

「私、ビーケとは付き合えないし、絶対無理。もう私にとって、ビーケは過去だし関わりたくない!!」

と、キカの言葉を聞いて、キカの元カレ…ビーケは相当ショックを受けたのだろう。

酷く傷ついた表情をし、ガックリと肩を落とすと


「…分かったよ。もう、お前とは関わらない。」

そう言って、トボトボとキカのアパートを去って行った。

可哀想な後ろ姿に、何か声を掛けてあげたくなりキカは口を開き掛けたが


「いかんぞ。今、ここで声を掛けたら、ビーケは勘違いするぞ?」

と、いうロゼの言葉で思い止まった。


「おそらくは、ビーケの可哀想な姿を度々見る事になるかもしれぬが。
ビーケとヨリを戻すつもりがないのであれば、心を鬼にして完全に無視する事じゃ。」

そう、ロゼはキカに声を掛けた。

キカは「…うん。」と、小さく返事をして「…あのね…」と、ロゼに声を掛けた。

その時だった。


『…こんのバカ猫っ!!どこ、いやがる!クソ猫!よく聞け。』

と、いきなりサクラから言葉飛ばしがきて、ロゼはビックリして体が飛び跳ねた。


『お前が居なくなってから、ショウ様は泣きながらお前を探してる。
今日、とても楽しみにしてたビックリ超デカシューも食べずにだ!!…可哀想に…』

「…にゃ…ニャンじゃとっ!?
あんなに楽しみにしとった、ビックリ超デカシューを食べにゃいなんて…!!!?」

『悪いと思うなら、今すぐ戻って来い!以上だ、このクソ猫ッッッ!!!』


と、いう話を聞いたら、居ても立っても居られず、キカの存在なんてすっかり忘れ


「お主様ぁぁ〜〜〜ッッッ!!!
待っててにゃぁ〜〜〜ん。にゃんにゃんにゃぁぁ〜〜〜ん!」

なんて浮かれた様子で、ピョーンと空中に飛び跳ねたかと思うと、

ポンっと猫の姿になり、空中でニパァーっと笑顔全開で、嬉しくて堪らないといった感じにクルンクルンと踊るように何回か回転し

パ…と、ロゼは消えて居なくなってしまった。

キカが、意を決して話していた事なんてロゼの耳には全く届いてなかったらしい。

急に、誰か見えない相手と会話してたかと思ったら、いきなり浮かれ調子になってキカの前から消えてしまった。

最初から、子猫なんか居なかったんじゃないかと思うほど呆気なく子猫は居なくなってしまった。


凄く寂しいし、挨拶も無しに居なくなっちゃうなんて薄情者!!って、怒りたい気持ちにもなる。

けどだ。数時間一緒に過ごしただけだけど、大人しくクールなイメージのあった子猫が、あんな風に元気いっぱいでお茶目になるなんてビックリする。

きっと、あれが子猫の本来の性格なのだろう。

とってもキュートで抱き締めたくなるくらいに愛くるしかった。控えめに言って、

すっごくすごぉぉ〜〜〜く可愛いっ!!!

カッコいい見た目なのに、中身が可愛いというギャップも凄くいい!!!

…お礼、言ってないのにな。


なんて、思うが

やはり、一番は…


【この芽生えかけた恋心…どうしてくれるのよ!!】


だった。

子猫との奇跡的な出会いや、あの出来事があって運命感じてたのにな…違ったのかな?

名前も知らない子猫に、淡い恋、即失恋した美女はこの夢か幻かのような出来事を忘れる事はないだろう。



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ー----


一方、ショウの元へ戻ったロゼはというと


「…ぐすん。だって、だって…お主様、サクラとばぁ〜っかりイチャイチャするんじゃもん。
我、すっごく寂しくって…ぐすんっ!」

ショウの胸の中、クスンクスン泣きながら甘えていた。

「…ロゼに寂しい思いさせちゃって、ごめんね。ロゼ、大好きだよ。」

と、ロゼをギュッと抱き締め涙を流すショウを見て

「…お、お主しゃま…」

自分の為に涙を流すショウに、きゅうぅ〜…っと胸が締め付けられロゼの為に流す涙をチロチロ舐めとった。

「我もお主様が大好きじゃ。」

ロゼは愛しいショウの顔を見上げ、スリスリと顔を擦り付け幸せそうだった。


その様子をサクラは、額に青筋を作りながら不機嫌な様子でその様子を見ている。

ショウとロゼの周りはポカポカ春のようだが、サクラだけ凍り付く様な真冬で温度差が凄い。


調子に乗り過ぎだっ!!!クソ猫がっっっ!!!

クソッ!!こんな事なら呼び戻さなきゃ良かった!!!

サクラは、イライラしながらロゼを見ているとある事に気付いた。


……………ッッッ!!!!??


「…こ、このエロ猫がぁぁ----ッッッ!!!?」


と、サクラはロゼの首根っこを掴み、ショウから引き剥がしたのだった。


「…にゃっ!ニャにをするんじゃ!?せっかくの感動の再会を邪魔しおってっ!!?」

ブラーンとぶら下がったまま、プンスコプンスコ怒ってサクラに抗議した。
それをサクラは、ギッと睨むと

『テメー、ショウ様に甘えるのも許しがたいってのに…ッ!!…それだけじゃ飽き足らず、どさくさに紛れてショウ様のお胸を触ってただろ!?』

と、ショウの耳に入らないように言葉飛ばしでロゼに喋り掛けてきた。

すると、ロゼは何故かフフンッ!と、得意気な顔をしてきたので、サクラは何かあるのかと怪訝な顔をしてロゼを見ていた。


「ニャハッ!来たる時の為に、地道にお主様のオッ◯イを開発しとるんじゃ!
もちろん、お主様の至るところを我の手で開発するつもりじゃ。

やはりの、来たる時には、お主様には気持ちよぉ〜〜くなってもらいたいからのぉ〜。
ムフフ。それで、我に夢中になってもらうんじゃ〜〜!ムフフ!
早よ、お主様、15才にならんかなぁ〜。楽しみじゃなぁ〜。
“ロゼ、しゅてき!もう、ロゼ無しでは生きていけにゃぁ〜い”
にゃぁ〜んて!ムフフ…ムフフフ!」


なんて、鼻息を荒くし目をキラキラ輝かせて力説してきた。


「こんのエロ猫がっっ!!?ショウ様が汚れる!!!最悪だ!!!」

と、つい言葉飛ばしを使うのも忘れ、軽蔑の目でロゼを叱りつけた。…が


「…にゃ?ソチには言われとうないわ。
ソチなんて、ご飯の時もマッサージの時も何かに付けてお主様に、何事も無いかのように装ってこっそりいやらしい事してるの知っとるんじゃからな?
それでも、我は我慢して目を瞑っておったのに!なのに、我だけ責めるにゃんてお門違いもいい所じゃ!!このムッツリスケベめが。」


なんて、ロゼにジト目で見られた。

…ウグッ!!?

少し(?)心当たりのあるサクラは、ロゼに鋭い事を言い当てられてたじろぐものの


「俺の事はどうでもいい!それよりも、お前だ!クソ猫っ!お前は、いつもいつもショウ様にくっ付き過ぎだ!!
甘え過ぎるのも大概にしろ!ショウ様が大変だろ!」

「聞き捨てならん!俺の事はどうでもいいじゃと!?ソチは何でも許されて我だけ許されぬにゃんて理不尽が過ぎるわっ!!」

負けじとロゼに言い返し、ロゼもそれに対抗して二人でギャーギャー罵り合っていた。

…目くそ鼻くそである。

そんな二人の様子を見てショウは

「仲良いなぁ。」

と、どこをどう見てそう思っているか謎であるが、ニコニコ微笑ましい気持ちで見ていた。


その時だった。


「あー。キウじゃん!」

何やら、聞き覚えのある声がしてショウは思わず声のする方を向いてしまった。

すると、そこには

寂しそうに一人、食事を取っていたキウ(タイジュチームの一般参加者)を見つけた

(最近、チームリーダーであるレッカが逮捕、強制離脱させられた為、別のチームに一般参加者として参加予定である)ユコが、ニコニコしながら


「久しぶり。ってか、やっぱり、一人なんだねぇ。恋人の日に一人なんて…可哀想。恋愛って、素敵なんだよ?
心も体も満たされて女の喜びっていうの?分かんないかなぁ〜?
まだ、彼氏もできた事ないキウは分からないかぁ〜。」

キウを下げに、わざわざ近付いてきたようだ。


「キウも早く彼氏見つけていい経験した方がいいよ?色んな男と恋して、たくさん恋愛経験値あげないと女としてレベル上げられないよ〜。
けど、キウはなんていうか女としての魅力がねぇ〜?クスクス。
キウは、このままずっとお一人様だろうなぁ〜。恋人もできないなんて、キウ可哀想ぉ〜。」

と、ワザと熱々アプローチをしてイケメン彼氏を見せつけてきた。
いつもの、自分モテる自慢&キウを嘲笑いにきたのだろう。


「そういえばさぁ。ウチね、最近また資格取ったんだよぉ。pc計算式検定の5級取ったんだよぉ〜。」

…え?急に、何の話???

キウは怪訝そうな顔をしてユコを見た。


「あーっ!ゴッメーーーン。キウは、なぁ〜んにも資格持ってなかったんだっけぇ〜。でも、資格くらい持ってなきゃダメだよ〜。
ウチだって、もう3つも資格持ってるのに。ウチ、キウの将来を心配して言ってるんだよ?いっぱい、勉強して頑張んないと!」

と、キウの事を心配するふりをして、見下してマウントを取ってるのが見え見えだ。

キウは、ユコを再起不能になるまでグッチャグチャに殴り倒してやりたい気持ちでいっぱいだが、何とか気持ちをグッと堪えた。

だが、コイツはどれだけ人を馬鹿にしたら気が済むのだろうとイライラする。なので、つい

「…いや、建築設計学検定の5級と薬草学5級は持ってるけど…」


と、ユコのマウントに反発して、自分の持っている資格を喋ってしまった。

すると、案の定


「そんな下らない資格持ってたって何の役にも立たないよぉ〜。ウチが持ってる役に立つ資格取らなきゃ意味ないじゃん。
ウチを見習ってさ。ちゃんとした、まともな資格取らなきゃ。それに、取っても意味ない資格で5級とか…プッ!がぁ〜んばれぇ〜。
プスプス!それに、持ってる資格少なすぎだよぉ。もっともっと資格取らなきゃぁ〜。ほ〜んと、キウは、ダメダメだよね〜。」

上から目線で馬鹿にしてきた。

一生懸命頑張って取得した資格をこんなに馬鹿にされて、キウは凄く悔しくてキッとユコを睨みつけた。すると


「そんな睨んじゃ駄目だよ?あのね。

ウチがキウのためを思って教えてあげたんだから、ウチに『感謝』しなきゃ駄目だよ?

人にはね、常に『ありがとう』の気持ちを忘れちゃいけないんだよ?

それに、どんな時でも『笑顔』でいなきゃ。『笑顔』は人の心を豊かにしてくれるんだよ?」


と、ユコ本人は素晴らしい事を教えてあげてるつもりだろうがが、彼女が言っても全く説得力はなくただただ腹立たしくムカつくだけだ。

なにせ、自分ができていないのだから。

なのに、自分はできているつもりのようだ。

頭おかしいんじゃないの!?

と、言ってやりたいが…

下手にユコに言い返せば、本当に面倒な事になるのでグッと堪えるしかないキウ。

ユコは、人を選んで態度を変えてくるのでユコにとって使えそうな人や自分より上だと思う人には良い人ぶるので、その人達を味方につけてキウを潰してこようとするだろう。

そうなると、悔しいがどうあがいても太刀打ちできない。

…本当に悔しいが…。

誰か、コイツをケッチョンケチョンにやっつけてギャフンと言わせてやってほしい!!

と、願い。

それも叶いそうにないので、心の中で憎しみ恨むしかできない。

…悔しいし、ムカつくッッッ!!!!!

それを遠くから見ていたショウは、ビックリした。


「…資格…!キウちゃんも、ユコも資格持ってるんだ…す…凄い…」

同い年の二人が、資格を持っている事にショウは驚きを隠せずいた。
そして、何にも資格がないどころか勉強もおぼつかないショウは、何て自分はダメダメなんだろ…と、ズーンと凹んだ。

それを見て、サクラは少し困ったように笑うと


「確かに、何かかしらの資格を持っていれば進学や職業に有利になるでしょう。ですが、資格を持っていなくても、素晴らしい実績や地位を築きあげている人達も少なくありません。
もちろん、資格がなければ就けない職業もあるので、自分が目指す職に必要な資格があれば取得は必須ですが。」

と、詳しく説明してくれたが、まだ小学生のショウには就職だ何だのいまいちピンとこなかった。
おそらく、ショウくらいの年齢から将来をきちんと意識している人は、将来素晴らしい人材になりうる人なのかもしれない。

「…サクラも、資格持ってるの?」

ショウは、さりげなくサクラに聞いてみると


「それほど、多くの資格は持っておりませんが自分が必要だと思う資格は持っていますよ。」

と、答えたので、サクラの言葉をそのまま受け取ってサクラも資格いっぱい持ってる訳じゃないんだなと、ショウはあんまり深く考える事もなくそこでこの話は終わった。

だが、サクラの言う多くの資格は持っていないと、ショウの考える多くの資格は持っていないでは大きく誤差があるのは言うまでもない。


「…資格取るって凄い事だと思うし、合格に向けて一生懸命勉強して資格取ったと思うんだけど。
…どうして、ユコさんはキウちゃんの頑張りを否定するんだろう?
…なんだか、凄く嫌な気持ちになっちゃう。」

ショウから見ても、ユコの態度や言葉はとてもじゃないが不愉快極まりない。

ショウがユコに虐められてるというのも大きな理由かもしれないが…ユコを見ているとやっぱり、凄く嫌な気持ちになる。

だからと言って、ユコとキウの間に割って入る事もできない。
こうやって嫌な気持ちをサクラやロゼに喋る事しかできない弱い自分に嫌気がさす。

けど、怖くて二人の間に入る勇気もないし、何より割って入っても何をしたらいいか分からない。

それに、ユコに口負けして泣く自分の姿しか想像できない。


「一番は、ああいう輩に構わない事です。ユコのような人間は、自分肯定しかしません。
自分がする事なす事全てが素晴らしいと、自分に酔っている頭のおかしい人間なので、周りがなんと言おうと聞く耳を持たない人種です。

自分が気に入らない人がいれば、その人が何をしても認める事ができず否定ばかりする心の貧しい輩でもあります。

腹は立つでしょうが構うだけ無駄です。彼女に何を言われても無視するのがいいでしょう。

下手に構うと、とても面倒くさい事になりますよ?なにせ、

“素晴らしい自分”

を、他人に強制してこようとしますから。」

ショウは、サクラの言ってる意味がよく理解できなかったが

つまり、ユコと関わると大変な事になるから知らないふりが一番って事だなと何となく感じとった。

「…ほんに、人によってああもコロコロと態度が変えるとは…凄いのぉ〜…。…あれを見てると人が信じられなくなりそうじゃ…。」

ロゼは、ユコを見てゾワワワ…!っと、身震いしていた。