あれから、事あるごとにフウライはハナに熱っぽい視線を送り続け
夜みんなが寝静まった頃、ハナに夜這いを掛けに足繁く通った。結局、未遂で終わるのだが。
だが、フウライの素晴らしい所はプライベートと訓練をスッパリと割り切っていた所。
フウライは半端が大嫌いで訓練を厳かにしたくない。なんでも完璧にこなしたいのだ。
これは、フウライのクソ高いプライドも大きく影響しているだろう。
そこのところは、ハナも「おお…!」と、感心していたが、プライベートに入った途端が大変だった。
…熱烈に口説かれ誘われるのだ。
今夜も今夜とて、初日のようなグイグイと迫る事はしないが、ハナの隣にピットリとくっ付き指と指を絡めるように手を繋ぐとトロンだ目でハナを見上げてくる。しかも
「…ハナ、可愛い。好きだよ。」
と、はにかみながらも惜しげもなく口説くのだ。
恋愛経験のないハナには溜まったもんじゃない。この甘い甘い雰囲気と羽が生えたように軽くなる体とドキドキ高鳴る胸…!
本当に勘弁してくれ!
自分の性に合わない
と、ハナは参っている。
だが、真剣な気持ちでぶつかって来るフウライを邪険にもできず、本当にどうしたらいいものやらだ。
そんな日々が続いた、ある日。
ここで、ようやくハナはある事に気付いた。
いつものように、フウライは熱烈にハナを口説いている時だった。
フウライはいつものように、コテンと頭をハナに凭れかかせ手を絡めて
「…俺さ。ハナだったら、ちょっとくらいお尻が裂けちゃってもいいんだ。いっぱい使って穴が閉じなくなって形が変になってもいい。
…怖くないって言ったら嘘になるけど、そうなっても、ハナ専用だって思うと、俺とハナしか知らない事だって思うと、きっと幸せな気持ちになれるって思う。」
と、潤んだ目で見上げてくるフウライの言葉に違和感。
最初のうちは、パニックで内容の違和感に気づけなかったが。毎日のように口説かれると、鈍いハナでも少しずつその違和感に気付くってもんだ。
…ん?
妙にお尻の話ばっかりするって思ってたら、まさかとは思うが…
そう思った時、ハナは思いついた。
そうか、そうだったのか。なら、話は早い!
フウライをさほど傷つける事なく、自分を諦めてくれる方法が見つかった!
「…あ〜、ちょっといいか?私はおまえに秘密にしていた事があるんだよ。ガッカリさせちまうかもしれないが…いいか?」
と、何とも都合悪そうにハナが言うと
「…いいよ、大丈夫。内容によっては時間がかかるかもしれないけど受け止めるから。」
なんて、真っ直ぐにハナを見るフウライに、漢らしいじゃないか!!と、ハナの心はギュンとした。
罪悪感はあるものの、フウライの将来を考えればこれが一番だと思う。
ハナはおもむろに服を脱ぎ始めてきて、
フウライはギョッとするものの、いよいよかな?なんて、ドギマギして
あらわになっていくハナの肌を食い入るように見ていた。よほど興味があるのか、前のめりにってハナをみているフウライの姿が
何だかちょっと可愛いなと思うハナであった。
まさかの展開の早さに、もしもの為にいっぱい本やネットで勉強しておいて良かった!
でも、潤滑ゼリーと避妊具はどうしよう…用意してない!
避妊具は…男同士だし最悪なきゃ無いでいいけど病気が心配…。
けど、今のこのチャンスを逃せば無くなってしまうかもしれない!
今はハナの気まぐれであれ、なんであれ
体だけの関係であってもハナの心を繋ぎ止められるなら、今は何だっていい!チャンスなんだ!!
と、僅かな時間でフウライはグルグルと考え、その答えに至った。
上着を脱ぎ捨て、シュルシュルとサラシを外せば…
ボイ〜〜〜ンっっ!!!?
見事な胸筋…胸筋???
大きな胸筋にしたって、これは……
と、マジマジと見ると
あまりに“ソレ”は柔らかそうで……気がつけば両手でムニュリと触っていた。
「…や、柔らか…」
なんと柔らかくて何とも言えない弾力…ずっと触ってたいくらいに気持ちいい…。
この手から溢れるふわふわの感触がいい…凄くいい。
癒しさえ感じる。
…控えめに言って至極最高だ!
あまりの魅力に、その先についてる突起を口に含んで味わいたくなった。
うっとりと、ハナの胸筋(?)に夢中になっているフウライにハナは
……あれ?
胸を見せても気付いてない???
仕方ない…最終手段だな…
こんな汚いもん見せられて気の毒だが我慢してくれ!
申し訳ない!
「…見てくれ。」
と、ズボンごと下着を脱いで見せた。
そこには、フウライが想像していたハナの巨大マンモスは無かった。
かわりに、フウライのフウライくんを受け入れる為の花びらがあった。
それを見て、フウライは雷に打たれたような衝撃を受けた。
………え………!!!?
あまりに驚き、声も失った。
驚きのあまり、ハナのハナちゃんを食い入るように見るフウライ。
よほど驚いたのだろう。フウライから、ゴクリと生唾を飲み込む大きな音が聞こえた。
その様子に罪悪感を覚えつつ、やっぱりそうかとハナは苦笑いしていた。
「…見ての通り、私の性別は女だよ。
実はな。軍事ごとでは、未だ男社会な所があってな。女だと何かと不便だったんだよ。
だから、リュウキ…あ〜、えっと、王さまとも相談して、男と偽って仕事してたんだ。」
と、ハナはいそいそと服を着ながらフウライに話した。
「おまえは、男が好きなんだろ?
なのに、そんなおまえに嘘ついたままじゃ可哀想だと思ってな。男と偽って、すまなかった。
おまえは、他にいい男を探してくれ。」
そんな風にハナに言われて、ハナが服を脱いだ理由が分かり
フウライは怒りでカッとなった。
「…俺にハナを諦めさせる為にわざわざ服を脱いで見せたの?どうだ、女だよ。嫌だろって?…本当、ハナは馬鹿だよ!」
と、ドンピシャリな事を言われ、ハナはドキィーーー!!とした。
「言っとくけど、俺はノーマルだからね!男は受け付けない!
だけど、ハナを好きになった。…最初は悩んだよ。凄く苦しんだし、本当に悩んだ。ハナは男だし、年だってだいぶ離れてるから。
だけど、そんなのどうでも良くなるくらいハナが好きなんだ。」
…これって…
…ドクン…
ハナ自身を好きになったのだ、というフウライの揺らぎない気持ち。覚悟さえ伝わってくる。
これ以上の告白があるだろうか。
この時、ハナの心は強く射抜かれた。
…ドクン…
「それがさ。ハナが女だって知った俺の今の気持ち分かる?
例え男だったとしてもハナと結ばれるなら幸せだって思えるくらいなのに。
ハナが女だって分かった今、信じられないくらいに嬉しくて興奮してる!
興奮して止まらない。これって、何のご褒美なのってくらいだ!!」
と、目をキラキラさせて喜んでる姿を見てハナは、自分の事でそんなに喜んでくれるなんてと驚いたし、何だかくすぐったい気持ちになっていた。
これは、いよいよもってフウライの気持ちから逃げられないなとハナは悟った。
そのタイミングを見計らったかのように、フウライはとんでもない話をしてきた。
「ハナはさ。もう一つ、大きな隠し事してるでしょ。」
ギクゥーーーッ!!?
としたが、頭がいいっていっても、さすがに、そこまではな…と思っていたハナ。
…だったが
「ハナの階級ってさ。上から数えた方がいいくらいだよね?多分、商工王に近い階級。」
まさかとは思っていたが、そこまで分かるなんて凄いを通り越して…怖い。
ほぼほぼ、いい線をいってるフウライの推理にハナはひくついてしまった。
人の性格から思考などを踏まえての僅かな変化までも見逃さないフウライはここで確信した。
そして、ここが正念場だと睨んだフウライは、ハナが逃げられないよう畳み掛ける事にした。
「ねえ。こんな条件はどう?」
「…条件?」
急に何を言い出すのかと、ハナが首を傾げれば
「この国では、15才以上で結婚ができる。」
そんな今さらな法律の話をしてきた。
それが、どうしたんだ?と、ハナはますます首を傾げた。
「…あ、その前に、ハナの本当の階級を教えてよ。」
と、フウライが聞いてきたので、ここまでバレてるなら隠しようもないなとハナは小さくため息をつき正直に話す事にした。
「私の階級は、“商工王国聖騎士団長”だよ。」
ハナの真実の階級を知り、フウライは目玉が飛び出る程驚いた。
階級が高いだろうとは思っていたが、
まさかの国のNo.2。つまり、商工王の次に偉いのだ。
驚くしかない。
「…ハッ…ハハ!やっぱり、ハナは凄いよ!うん、決めた。
ハナ、俺は15才までに聖騎士団に入団……いや、そんなんじゃダメだ!」
と、フウライはぶつぶつと独り言を言いながら考え込んでると思ったら
意を決したようにハナを見上げ
「俺が15才までに、商工王国聖騎士副団長になれたら、結婚してくれ。」
なんて、とんでもない発言をしてきた。
いつか早いうちに、副団長どころかリュウキの後継者にでもなってしまいそうな天才ではあるが、さすがに15才はないだろうとハナは思った。
…が。フウライはハナの考えを数々覆してきた男である。
…いや、待てよ。コイツだしな
まさかのまさかが無いとは断言できないぞ
と、考えが至り。その、まさかが怖いので
一応…念のために保険をかける事にした。
「15才で副団長、そして、その時もまだ、私の事が好きだったらな?そん時は、おまえと結婚するよ!」
いくら天才だからって、15才で副団長なんて無理があるだろう!
と、ハナは自信満々でフウライのプロポーズを受けたのだった。
それに、それまでの間でハナへの気持ちが冷めるかもしれない。他の誰かを好きになる事だって大いにあり得るのだから。
「嘘つかないでよ?絶対だからね!」
と、念を押されても、ハナは
「おお、嘘はつかないよ!フウライも、その間に私の事、好きじゃ無くなっても大丈夫だからな!
その時は私の事なんて気にしないで、自分の好きに生きろよ。」
軽い調子でそう言った。
本当にハナは、俺の事舐めすぎだとフウライはプライドを傷つけられ、かなりムカついた。
同時に、絶対やってやるとメラメラと闘志に火がつくのだった。
そして、抜け目無くハナに念書を書かせ、合宿終わりに裁判所へ提出保管してもらうのだった。
それから、三年後…
フウライは、若干15才にして
商工王国聖騎士副団長に昇格。
中学三年の6月の出来事であった。
ハナにとって、まさかのまさかが本当になった瞬間だ。
昇格式で、ステージに立つフウライを見た時は様々な思いが胸に込み上げてきた。
間近でフウライの苦悩や頑張りを見てきたのだ、涙くらい出るってもんだ。
学生でありながらもフウライは、物凄いスピードで昇格していき13才にして第一部隊副隊長、それから数ヶ月もない内に隊長を経て
14才で聖騎士団まで上り詰めた時には、ハナはいよいよもって覚悟した。
そして、副団長候補にフウライの名前があがった時、それに対して誰も異論が無く適任だと賛同する者が多かった。
問題の年齢、経験不足など些細な事に感じる程迄にフウライの力は圧倒的であり、覇気さえ纏っていた。
力や能力だけでない。頭脳明晰で洞察力や推測、鋭さがあり非の打ち所がない。
無さすぎて怖い所があり、プライドの高さと完璧主義な性格からみんなから畏怖の対象とされているが、フウライがいるだけでピリッと場の空気が引き締まるのだ。
ゆる〜いハナが団長なせいもあって、厳しいフウライの存在は必要不可欠であった。
会議でフウライが副団長に決まった時、ハナは有言実行だなと感慨深い気持ちでいた。
フウライは、昇格の為に何事にも緻密な計画を練り目標に向かい一心不乱に打ち込んだ。
その間にも、もちろんハナを熱烈に誘惑し口説き続けた。
その甲斐もあり、フウライが第一部隊副隊長に昇格した頃からハナもだいぶ絆され、自分の気持ちにも向き合い認められるようになっていた。
フウライが副団長になると決定した時、ハナはある事を決心していた。
その時、その事を王であり親友でもあるリュウキに話したのだ。
「私は、フウライと結婚するよ。」
「…は!?結婚って、お前…はあ???」
まさかのハナの結婚発言に、リュウキは目を白黒させていた。
確か…ハナとフウライは恋人ではないし、体の関係だってないはずだ。
二人の事を考えれば、年齢や身分、容姿などの弊害しかない。
弊害が無いと言えば性別の問題だけだろう。性別の問題については、残念ながらまだまだ問題が山積みだから。
それはさて置いてもだ。
小学生の頃のフウライは、ハナに恋心を抱いていたのは分かっていた。かなり、分かりやすかった。
しかし、中学に上がってからのフウライは、そんな気配は一切感じられなくなっていた。
訓練や仕事の時。自分にも他人にも厳しいフウライは、だらしないハナに苛つきチクチクと嫌味さえ言っていた筈だ。
我慢できなくなると容赦なくガミガミと怒鳴り散らす始末だ。
てっきり、ハナに幻滅しハナに対する恋心なんて、とうの昔に消え去ってしまったのだと思っていた。
いっときの気の迷いだったのだなと納得さえしていた。
そもそも、ハナは美人じゃない。
ムキムキならぬムチムチのマッチョの男にしか見えない
大ざっぱで粗野。女とは思えない言動もあいまり、とてもじゃないが恋愛対象には見れない
どう考えても、アイツは無理だ
いい奴ではあるんだがな
フウライなら、どんな極上の女もよりどりみどり選び放題だろうに…
よりにもよって、アイツを選ぶなんて…趣味が悪過ぎるとしか思えん
それに、ハナに関しては
飄々としていて捉えどころがない
結婚の報告は受けたが、果たしてフウライの事を好きなのか何なのか分からない所がある
“面白そうだから”
とか
“ただの気まぐれ”
な、可能性も拭いきれない
ぶっちゃけ、不安しかない
と、頭を抱えるリュウキだ。
しかし…
「結婚したら、私は仕事より親友のお前より、フウライをとるよ。結婚した、その時から私の一番はフウライだ。
そう決めた。だから、フウライの事で何かあった時は遠慮なく私を切り離してくれ。」
そう断言し、いつもの緩い調子であはは!とは笑っていた。
だが、目を見れば強い意志が固まっているのが分かった。
…そうか、お前…
リュウキは、そう考えると
「なんだか、振られた気分だな。」
と、小さく笑って見せた。
「お?おまえでも振られた経験があるのか?」
「いや、ないな。」
「あはは!嫌な奴だな、お前。
いつか、こっ酷く振られる事を期待してるよ!あはは!」
ーーーーーーーーーー
そして、ハナから結婚の了承を得てフウライは、はれて婚約者になる事ができた。
あとは、婚姻届に両親のサインをもらえばいいだけだ。
それと同時期に、フウライは何故かムーサディーテ国の国民権と王族の肩書きを取り戻す事もできたのだった。
これは、本当にたまたまが重なっただけだ。
どうやら、向こうの方でフウライが中学三年生を迎えた頃に、厳し過ぎる処分を解いてやろうと決まっていた事らしい。
正直、フウライはそんなの要らなかったが両親と女王である叔母が直々にフウライの元を訪れ、その事を伝えに来てくれたので有り難く受け入れる事にした。
その時、両親と叔母に婚約者であるハナを紹介して一波乱あったわけだが…。
そこは割愛しよう。
叔母の助けもあり、はれて二人は結婚した。
これは余談であるが
結婚した翌日、いつものようにハナは遅刻して出勤してきたのだが“うっかり”サラシを巻き忘れ大きな大きなおっぱいを揺らしながら登場し、その場にいた面々を仰天させていた。
もちろん、新しく副団長に就任したフウライも驚いてピシリと固まってしまっている。
「…え?だ…団長…?」
と、ハナの胸を凝視しフウライが困惑し戸惑っていると
「ああ、コレか?…ん?なんだ、お前ら?アッハハ!まさか、お前ら“私”の事、男だと思ってたか?あはは!」
なんて、何でもないかのように笑い飛ばしていた。
ハナのあまりの自然さにみんな
…あれ?
そうだっけ?
…ああ、そうだっけ。
そうだった、そうだった
と、いつもと変わらない日常となった。
ただ、体もデカければ爆乳だなと…男女関係なくついついハナのデカい乳に目がいってしまうが。
その日、仕事から帰って来たフウライは、すぐさまハナのおっぱいに顔を埋めてきて不貞腐れていたという。
「…俺だけのおっぱいなのに…!
どうして、急に女だってバラしたの?」
「…ん〜、何でだろうな?あはは!」
「全然、“あはは”じゃないから!」
と、珍しく甘えたになってブスくれるフウライを可愛い奴だなと、くすぐったく感じながらハナは思った。
…だってさ
真っ直ぐひたむきに頑張るお前の姿を見てたらさ。自分が女って事に引け目感じて
男だって偽ってた自分がバカらしく思えちまったんだよ
いつだってカッコいいお前に、恥じない姿を見せたくなっちまったのさ
ーーーーーーーー一
母国や名前まで捨て、見知らぬ国で一から並々ならぬ努力をして今の地位を手に入れた。
それもこれも、全てはハナを手に入れる為だ。
やっとの思いでハナを手に入れた矢先のダリアという化け物との遭遇。
ハナを失ってしまうかもしれないという恐怖を味わい、自分がいても全く歯が立たない相手。
ハナを守ってやれないと初めて無力を感じ絶望したに違いない。
フウライはハナに対し、並々ならぬ思いを秘めている。
…さて、これから、どうなるもんか。
だが、しかし残念だ。
もはや、ハナとフウライは国の財産。
俺とて、簡単に手放す事はできないな。
と、リュウキは不敵に笑った。
夜みんなが寝静まった頃、ハナに夜這いを掛けに足繁く通った。結局、未遂で終わるのだが。
だが、フウライの素晴らしい所はプライベートと訓練をスッパリと割り切っていた所。
フウライは半端が大嫌いで訓練を厳かにしたくない。なんでも完璧にこなしたいのだ。
これは、フウライのクソ高いプライドも大きく影響しているだろう。
そこのところは、ハナも「おお…!」と、感心していたが、プライベートに入った途端が大変だった。
…熱烈に口説かれ誘われるのだ。
今夜も今夜とて、初日のようなグイグイと迫る事はしないが、ハナの隣にピットリとくっ付き指と指を絡めるように手を繋ぐとトロンだ目でハナを見上げてくる。しかも
「…ハナ、可愛い。好きだよ。」
と、はにかみながらも惜しげもなく口説くのだ。
恋愛経験のないハナには溜まったもんじゃない。この甘い甘い雰囲気と羽が生えたように軽くなる体とドキドキ高鳴る胸…!
本当に勘弁してくれ!
自分の性に合わない
と、ハナは参っている。
だが、真剣な気持ちでぶつかって来るフウライを邪険にもできず、本当にどうしたらいいものやらだ。
そんな日々が続いた、ある日。
ここで、ようやくハナはある事に気付いた。
いつものように、フウライは熱烈にハナを口説いている時だった。
フウライはいつものように、コテンと頭をハナに凭れかかせ手を絡めて
「…俺さ。ハナだったら、ちょっとくらいお尻が裂けちゃってもいいんだ。いっぱい使って穴が閉じなくなって形が変になってもいい。
…怖くないって言ったら嘘になるけど、そうなっても、ハナ専用だって思うと、俺とハナしか知らない事だって思うと、きっと幸せな気持ちになれるって思う。」
と、潤んだ目で見上げてくるフウライの言葉に違和感。
最初のうちは、パニックで内容の違和感に気づけなかったが。毎日のように口説かれると、鈍いハナでも少しずつその違和感に気付くってもんだ。
…ん?
妙にお尻の話ばっかりするって思ってたら、まさかとは思うが…
そう思った時、ハナは思いついた。
そうか、そうだったのか。なら、話は早い!
フウライをさほど傷つける事なく、自分を諦めてくれる方法が見つかった!
「…あ〜、ちょっといいか?私はおまえに秘密にしていた事があるんだよ。ガッカリさせちまうかもしれないが…いいか?」
と、何とも都合悪そうにハナが言うと
「…いいよ、大丈夫。内容によっては時間がかかるかもしれないけど受け止めるから。」
なんて、真っ直ぐにハナを見るフウライに、漢らしいじゃないか!!と、ハナの心はギュンとした。
罪悪感はあるものの、フウライの将来を考えればこれが一番だと思う。
ハナはおもむろに服を脱ぎ始めてきて、
フウライはギョッとするものの、いよいよかな?なんて、ドギマギして
あらわになっていくハナの肌を食い入るように見ていた。よほど興味があるのか、前のめりにってハナをみているフウライの姿が
何だかちょっと可愛いなと思うハナであった。
まさかの展開の早さに、もしもの為にいっぱい本やネットで勉強しておいて良かった!
でも、潤滑ゼリーと避妊具はどうしよう…用意してない!
避妊具は…男同士だし最悪なきゃ無いでいいけど病気が心配…。
けど、今のこのチャンスを逃せば無くなってしまうかもしれない!
今はハナの気まぐれであれ、なんであれ
体だけの関係であってもハナの心を繋ぎ止められるなら、今は何だっていい!チャンスなんだ!!
と、僅かな時間でフウライはグルグルと考え、その答えに至った。
上着を脱ぎ捨て、シュルシュルとサラシを外せば…
ボイ〜〜〜ンっっ!!!?
見事な胸筋…胸筋???
大きな胸筋にしたって、これは……
と、マジマジと見ると
あまりに“ソレ”は柔らかそうで……気がつけば両手でムニュリと触っていた。
「…や、柔らか…」
なんと柔らかくて何とも言えない弾力…ずっと触ってたいくらいに気持ちいい…。
この手から溢れるふわふわの感触がいい…凄くいい。
癒しさえ感じる。
…控えめに言って至極最高だ!
あまりの魅力に、その先についてる突起を口に含んで味わいたくなった。
うっとりと、ハナの胸筋(?)に夢中になっているフウライにハナは
……あれ?
胸を見せても気付いてない???
仕方ない…最終手段だな…
こんな汚いもん見せられて気の毒だが我慢してくれ!
申し訳ない!
「…見てくれ。」
と、ズボンごと下着を脱いで見せた。
そこには、フウライが想像していたハナの巨大マンモスは無かった。
かわりに、フウライのフウライくんを受け入れる為の花びらがあった。
それを見て、フウライは雷に打たれたような衝撃を受けた。
………え………!!!?
あまりに驚き、声も失った。
驚きのあまり、ハナのハナちゃんを食い入るように見るフウライ。
よほど驚いたのだろう。フウライから、ゴクリと生唾を飲み込む大きな音が聞こえた。
その様子に罪悪感を覚えつつ、やっぱりそうかとハナは苦笑いしていた。
「…見ての通り、私の性別は女だよ。
実はな。軍事ごとでは、未だ男社会な所があってな。女だと何かと不便だったんだよ。
だから、リュウキ…あ〜、えっと、王さまとも相談して、男と偽って仕事してたんだ。」
と、ハナはいそいそと服を着ながらフウライに話した。
「おまえは、男が好きなんだろ?
なのに、そんなおまえに嘘ついたままじゃ可哀想だと思ってな。男と偽って、すまなかった。
おまえは、他にいい男を探してくれ。」
そんな風にハナに言われて、ハナが服を脱いだ理由が分かり
フウライは怒りでカッとなった。
「…俺にハナを諦めさせる為にわざわざ服を脱いで見せたの?どうだ、女だよ。嫌だろって?…本当、ハナは馬鹿だよ!」
と、ドンピシャリな事を言われ、ハナはドキィーーー!!とした。
「言っとくけど、俺はノーマルだからね!男は受け付けない!
だけど、ハナを好きになった。…最初は悩んだよ。凄く苦しんだし、本当に悩んだ。ハナは男だし、年だってだいぶ離れてるから。
だけど、そんなのどうでも良くなるくらいハナが好きなんだ。」
…これって…
…ドクン…
ハナ自身を好きになったのだ、というフウライの揺らぎない気持ち。覚悟さえ伝わってくる。
これ以上の告白があるだろうか。
この時、ハナの心は強く射抜かれた。
…ドクン…
「それがさ。ハナが女だって知った俺の今の気持ち分かる?
例え男だったとしてもハナと結ばれるなら幸せだって思えるくらいなのに。
ハナが女だって分かった今、信じられないくらいに嬉しくて興奮してる!
興奮して止まらない。これって、何のご褒美なのってくらいだ!!」
と、目をキラキラさせて喜んでる姿を見てハナは、自分の事でそんなに喜んでくれるなんてと驚いたし、何だかくすぐったい気持ちになっていた。
これは、いよいよもってフウライの気持ちから逃げられないなとハナは悟った。
そのタイミングを見計らったかのように、フウライはとんでもない話をしてきた。
「ハナはさ。もう一つ、大きな隠し事してるでしょ。」
ギクゥーーーッ!!?
としたが、頭がいいっていっても、さすがに、そこまではな…と思っていたハナ。
…だったが
「ハナの階級ってさ。上から数えた方がいいくらいだよね?多分、商工王に近い階級。」
まさかとは思っていたが、そこまで分かるなんて凄いを通り越して…怖い。
ほぼほぼ、いい線をいってるフウライの推理にハナはひくついてしまった。
人の性格から思考などを踏まえての僅かな変化までも見逃さないフウライはここで確信した。
そして、ここが正念場だと睨んだフウライは、ハナが逃げられないよう畳み掛ける事にした。
「ねえ。こんな条件はどう?」
「…条件?」
急に何を言い出すのかと、ハナが首を傾げれば
「この国では、15才以上で結婚ができる。」
そんな今さらな法律の話をしてきた。
それが、どうしたんだ?と、ハナはますます首を傾げた。
「…あ、その前に、ハナの本当の階級を教えてよ。」
と、フウライが聞いてきたので、ここまでバレてるなら隠しようもないなとハナは小さくため息をつき正直に話す事にした。
「私の階級は、“商工王国聖騎士団長”だよ。」
ハナの真実の階級を知り、フウライは目玉が飛び出る程驚いた。
階級が高いだろうとは思っていたが、
まさかの国のNo.2。つまり、商工王の次に偉いのだ。
驚くしかない。
「…ハッ…ハハ!やっぱり、ハナは凄いよ!うん、決めた。
ハナ、俺は15才までに聖騎士団に入団……いや、そんなんじゃダメだ!」
と、フウライはぶつぶつと独り言を言いながら考え込んでると思ったら
意を決したようにハナを見上げ
「俺が15才までに、商工王国聖騎士副団長になれたら、結婚してくれ。」
なんて、とんでもない発言をしてきた。
いつか早いうちに、副団長どころかリュウキの後継者にでもなってしまいそうな天才ではあるが、さすがに15才はないだろうとハナは思った。
…が。フウライはハナの考えを数々覆してきた男である。
…いや、待てよ。コイツだしな
まさかのまさかが無いとは断言できないぞ
と、考えが至り。その、まさかが怖いので
一応…念のために保険をかける事にした。
「15才で副団長、そして、その時もまだ、私の事が好きだったらな?そん時は、おまえと結婚するよ!」
いくら天才だからって、15才で副団長なんて無理があるだろう!
と、ハナは自信満々でフウライのプロポーズを受けたのだった。
それに、それまでの間でハナへの気持ちが冷めるかもしれない。他の誰かを好きになる事だって大いにあり得るのだから。
「嘘つかないでよ?絶対だからね!」
と、念を押されても、ハナは
「おお、嘘はつかないよ!フウライも、その間に私の事、好きじゃ無くなっても大丈夫だからな!
その時は私の事なんて気にしないで、自分の好きに生きろよ。」
軽い調子でそう言った。
本当にハナは、俺の事舐めすぎだとフウライはプライドを傷つけられ、かなりムカついた。
同時に、絶対やってやるとメラメラと闘志に火がつくのだった。
そして、抜け目無くハナに念書を書かせ、合宿終わりに裁判所へ提出保管してもらうのだった。
それから、三年後…
フウライは、若干15才にして
商工王国聖騎士副団長に昇格。
中学三年の6月の出来事であった。
ハナにとって、まさかのまさかが本当になった瞬間だ。
昇格式で、ステージに立つフウライを見た時は様々な思いが胸に込み上げてきた。
間近でフウライの苦悩や頑張りを見てきたのだ、涙くらい出るってもんだ。
学生でありながらもフウライは、物凄いスピードで昇格していき13才にして第一部隊副隊長、それから数ヶ月もない内に隊長を経て
14才で聖騎士団まで上り詰めた時には、ハナはいよいよもって覚悟した。
そして、副団長候補にフウライの名前があがった時、それに対して誰も異論が無く適任だと賛同する者が多かった。
問題の年齢、経験不足など些細な事に感じる程迄にフウライの力は圧倒的であり、覇気さえ纏っていた。
力や能力だけでない。頭脳明晰で洞察力や推測、鋭さがあり非の打ち所がない。
無さすぎて怖い所があり、プライドの高さと完璧主義な性格からみんなから畏怖の対象とされているが、フウライがいるだけでピリッと場の空気が引き締まるのだ。
ゆる〜いハナが団長なせいもあって、厳しいフウライの存在は必要不可欠であった。
会議でフウライが副団長に決まった時、ハナは有言実行だなと感慨深い気持ちでいた。
フウライは、昇格の為に何事にも緻密な計画を練り目標に向かい一心不乱に打ち込んだ。
その間にも、もちろんハナを熱烈に誘惑し口説き続けた。
その甲斐もあり、フウライが第一部隊副隊長に昇格した頃からハナもだいぶ絆され、自分の気持ちにも向き合い認められるようになっていた。
フウライが副団長になると決定した時、ハナはある事を決心していた。
その時、その事を王であり親友でもあるリュウキに話したのだ。
「私は、フウライと結婚するよ。」
「…は!?結婚って、お前…はあ???」
まさかのハナの結婚発言に、リュウキは目を白黒させていた。
確か…ハナとフウライは恋人ではないし、体の関係だってないはずだ。
二人の事を考えれば、年齢や身分、容姿などの弊害しかない。
弊害が無いと言えば性別の問題だけだろう。性別の問題については、残念ながらまだまだ問題が山積みだから。
それはさて置いてもだ。
小学生の頃のフウライは、ハナに恋心を抱いていたのは分かっていた。かなり、分かりやすかった。
しかし、中学に上がってからのフウライは、そんな気配は一切感じられなくなっていた。
訓練や仕事の時。自分にも他人にも厳しいフウライは、だらしないハナに苛つきチクチクと嫌味さえ言っていた筈だ。
我慢できなくなると容赦なくガミガミと怒鳴り散らす始末だ。
てっきり、ハナに幻滅しハナに対する恋心なんて、とうの昔に消え去ってしまったのだと思っていた。
いっときの気の迷いだったのだなと納得さえしていた。
そもそも、ハナは美人じゃない。
ムキムキならぬムチムチのマッチョの男にしか見えない
大ざっぱで粗野。女とは思えない言動もあいまり、とてもじゃないが恋愛対象には見れない
どう考えても、アイツは無理だ
いい奴ではあるんだがな
フウライなら、どんな極上の女もよりどりみどり選び放題だろうに…
よりにもよって、アイツを選ぶなんて…趣味が悪過ぎるとしか思えん
それに、ハナに関しては
飄々としていて捉えどころがない
結婚の報告は受けたが、果たしてフウライの事を好きなのか何なのか分からない所がある
“面白そうだから”
とか
“ただの気まぐれ”
な、可能性も拭いきれない
ぶっちゃけ、不安しかない
と、頭を抱えるリュウキだ。
しかし…
「結婚したら、私は仕事より親友のお前より、フウライをとるよ。結婚した、その時から私の一番はフウライだ。
そう決めた。だから、フウライの事で何かあった時は遠慮なく私を切り離してくれ。」
そう断言し、いつもの緩い調子であはは!とは笑っていた。
だが、目を見れば強い意志が固まっているのが分かった。
…そうか、お前…
リュウキは、そう考えると
「なんだか、振られた気分だな。」
と、小さく笑って見せた。
「お?おまえでも振られた経験があるのか?」
「いや、ないな。」
「あはは!嫌な奴だな、お前。
いつか、こっ酷く振られる事を期待してるよ!あはは!」
ーーーーーーーーーー
そして、ハナから結婚の了承を得てフウライは、はれて婚約者になる事ができた。
あとは、婚姻届に両親のサインをもらえばいいだけだ。
それと同時期に、フウライは何故かムーサディーテ国の国民権と王族の肩書きを取り戻す事もできたのだった。
これは、本当にたまたまが重なっただけだ。
どうやら、向こうの方でフウライが中学三年生を迎えた頃に、厳し過ぎる処分を解いてやろうと決まっていた事らしい。
正直、フウライはそんなの要らなかったが両親と女王である叔母が直々にフウライの元を訪れ、その事を伝えに来てくれたので有り難く受け入れる事にした。
その時、両親と叔母に婚約者であるハナを紹介して一波乱あったわけだが…。
そこは割愛しよう。
叔母の助けもあり、はれて二人は結婚した。
これは余談であるが
結婚した翌日、いつものようにハナは遅刻して出勤してきたのだが“うっかり”サラシを巻き忘れ大きな大きなおっぱいを揺らしながら登場し、その場にいた面々を仰天させていた。
もちろん、新しく副団長に就任したフウライも驚いてピシリと固まってしまっている。
「…え?だ…団長…?」
と、ハナの胸を凝視しフウライが困惑し戸惑っていると
「ああ、コレか?…ん?なんだ、お前ら?アッハハ!まさか、お前ら“私”の事、男だと思ってたか?あはは!」
なんて、何でもないかのように笑い飛ばしていた。
ハナのあまりの自然さにみんな
…あれ?
そうだっけ?
…ああ、そうだっけ。
そうだった、そうだった
と、いつもと変わらない日常となった。
ただ、体もデカければ爆乳だなと…男女関係なくついついハナのデカい乳に目がいってしまうが。
その日、仕事から帰って来たフウライは、すぐさまハナのおっぱいに顔を埋めてきて不貞腐れていたという。
「…俺だけのおっぱいなのに…!
どうして、急に女だってバラしたの?」
「…ん〜、何でだろうな?あはは!」
「全然、“あはは”じゃないから!」
と、珍しく甘えたになってブスくれるフウライを可愛い奴だなと、くすぐったく感じながらハナは思った。
…だってさ
真っ直ぐひたむきに頑張るお前の姿を見てたらさ。自分が女って事に引け目感じて
男だって偽ってた自分がバカらしく思えちまったんだよ
いつだってカッコいいお前に、恥じない姿を見せたくなっちまったのさ
ーーーーーーーー一
母国や名前まで捨て、見知らぬ国で一から並々ならぬ努力をして今の地位を手に入れた。
それもこれも、全てはハナを手に入れる為だ。
やっとの思いでハナを手に入れた矢先のダリアという化け物との遭遇。
ハナを失ってしまうかもしれないという恐怖を味わい、自分がいても全く歯が立たない相手。
ハナを守ってやれないと初めて無力を感じ絶望したに違いない。
フウライはハナに対し、並々ならぬ思いを秘めている。
…さて、これから、どうなるもんか。
だが、しかし残念だ。
もはや、ハナとフウライは国の財産。
俺とて、簡単に手放す事はできないな。
と、リュウキは不敵に笑った。
