ロゼはショウの元に帰って来るなり、猫化してショウの胸に飛びつきスリスリを顔を擦り付けて甘えてきた。

「…も〜、嫌じゃ!お主様から離れとうないっ!!最悪じゃ!!」

と、仕切りに文句を言ってショウに抱きついたまま離れないロゼに違和感を感じ、ショウはすぐにその違和感に気付いた。


「…ろ、ろろろ、ロゼ!?どうしたの?
毛が…凄く短くなってるよ?」


そう長毛だったロゼの毛が短毛になっていたのだ。

驚いたショウは、何があったのかとロゼに聞くとショウの胸に埋もれた顔をチラッと覗かせ

「…お主様は、短い毛は嫌いかえ?」

と、シュンとした顔で聞いてきた。


「ううん!ロゼは短い毛も凄く似合ってるし好きだよ。でも、あんなに長かった毛がいきなり短くなってたからビックリしちゃった。
ロゼ。可愛い!」

その言葉を聞いただけで、ロゼは天にも昇るような気持ちになり嬉しくて

「我もお主様が大好きじゃぁ〜!」

と、連呼し、またショウの胸に埋もれスリスリしていた。

しかし、帰って来るなりムスッとした表情のままショウの胸に顔を隠したロゼ。
よっぽど嫌な事があったんだなとショウはロゼが気の毒になり、猫化したロゼを抱きしめ頭を撫でている。

その間にも、サクラとシープはオブシディアンの話を聞き深刻な表情となっていた。


「…あまりにも似ている。」

と、サクラが呟き

「ああ。この国に伝えられているディヴァインと自分達が知るダリアは、同一人物のように感じる。」

サクラに続き、オブシディアンもそう話を続けて来た。

「…まさか、この国でもダリアらしき人物の名前があがってくるなんてな。」

シープも驚き、どこまでダリアがついて回るんだとゾッとした。

そして、大聖女の言葉が気になる。大聖女はどうも、ロゼとディヴァイン(ダリアと思わしき人物)が同一人物だと思っているようだった。

三人が、ロゼとダリアの関係性について話し合っている中


「…お主様…我、怖い…」

ロゼは、ショウに自分の抱えている胸の内をポツリポツリと打ち明けていた。

「…何が怖いの?教えてくれる?」

ショウはできるだけ優しく声を掛けると、ショウにしがみつくロゼの手にキュッと力が入ったのを感じた。

「…よう分からんのじゃが、我が我でない気がする時があるのじゃ…」

少し震えているロゼの体をゆっくりと撫で、自分はロゼに何かしてあげる事ができるのかな?なんとか力になってあげたいと心が痛んだ。

…だけど、どうしてだろう?

ショウにはその原因が分かる気がするのだ。

…だって…

ロゼが情緒不安定になった時、ロゼが二重にブレて見える時があるのだ。

最初は地震かな?目眩かな?と、思って慌てていたが自分は元気だし、周りの反応を見てもどうやら違うらしい。
他の人達を見てもブレる事なく普通に見える。周りとロゼを見比べてもロゼだけ何故かブレて見える。

今だってそう。

ロゼがショウに不安を訴えかけてる今現在、ショウの目にはロゼが二重に見えている。


「…あのね、気のせいかと思ってたんだけど。
私ね、“ロゼ”の中に“ロゼ”が見える気がするの。」

と、ショウは言ってきた。

その言葉にロゼはもちろん、サクラ達も驚き勢いよくショウを見た。

ショウは今見えてる中性的な姿の中に薄っすらと別の人が見える気がするのだ。

まるで、“食べられてる”様な“飲み込まれている”様なそんな感じがする。
しかも、どうしてだかそれが中途半端で止まっている。それ以上の動きが無い。
ただ分かる事は、飲み込まれそうになっている人物、その人がロゼだという事。

じゃあ、ロゼを飲み込もうとしてる人は誰?

…けど、何故か分からないが自分はその人を知ってる気がする。


「…違ってたら、ごめんね?私の目がおかしいのかな?うまく言えないんだけど、今見えてるロゼの姿は、ロゼの本当の姿じゃないの。」

どういう事だと、ショウの言葉を邪魔しないようサクラ達はショウに色んな質問をぶつけたいのを我慢し

ショウのただでさえ説明下手なのに理解しがたい内容を理解しようと根気強く聞いている。


しかし、ショウの言葉をロゼは理解できていた。頭で理解してるのではなく何となくの感覚でだ。


「…きっとね。ロゼはずっとずっと、“それ”と戦ってきたんだと思う。」


…あ…

そうじゃ…我は、何かに飲み込まれそうになりながらも必死に“それ”に抗い続けていた

お主様に会いたい

お主様の側にいたい

その一心で


ショウがここに来る今の今までロゼは“それ”と戦い続けていた。

だが、ショウが来たと同時に“それ”は動きを止めロゼはそこから抜け出したかに思っていた。

しかし…


「…ごめんね。ロゼを見つけてあげられなくて。ずっとずっと怖い思いさせてたね。
…でもね。もう、大丈夫だよ。」


そう言ってショウはロゼに、元の姿に戻ってベットに座る様にお願いした。

よく分からないが、お主様がそう言うのならとロゼは人の姿に戻りちょこんとベットに座った。

すると、ショウはロゼをギュッと抱き締めてきた。

そこで、ロゼは不思議な感覚がした。
例えるなら、肉体をすり抜けて魂に直接触れられてる様なそんな感覚。

かと、思ったらショウは


「よいしょっ!!!」


と、力んだ声を出して何かを引っこ抜く体勢をし踏ん張っていた。

それに合わせ、ロゼは引っ張られる様な感じがした。まるで、とてつもなく粘着質の高いスライムの中から引っ張りあげられてる様なそんな感じ。

だが、ショウの非力な力では僅かしか動きが無く、ロゼもそこから出ようと踏ん張るが鼠取りの粘着物の様にグニュニューッと黒く強い粘りがくっ付いて取れない。


サクラ達もこの異常事態に自分達はどうすればいいのかと様子を見た。

すると、ロゼの体から微妙にもう一人の人が見えた。だが、それは黒い粘着質がモノのせいで、ショウが引っ張って取り出そうとしてもなかなか出られずいる様に見える。

なので


「ショウ様!私に何かお手伝いできる事はありませんか?」

と、サクラはショウに尋ねた。

「…う、うん!あのね、私だけの力じゃロゼを助けてあげられないの!!お願い。助けて、サクラ!」

自分だけではどうにも出来なくて慌て過ぎてパニックになっていたのだろう。あまりに混乱し過ぎて人に助けてもらうという発想が思い浮かばなかった様だ。

泣きそうな顔で、サクラに助けを求めるショウに

「もちろんです!」

サクラがロゼの体に手を触れても、外側のロゼの体しか掴む事はできず中のロゼに触れる事はできなかった。

なので

「申し訳ありません。」

と、後ろからショウの腰を抱き後ろに引っ張った。

…ああ、ショウ様のか弱いお腹をこんなにも引っ張って…

あのひ弱な腕で、あの強力な粘りからあのバカ猫を引っ張るなんて

ショウ様のお体が心配だ

と、サクラはショウが腕やお腹を痛めないかそればかり気になっていた。
だが、ショウの必死さに辞めましょうなんてとても言えなくて。

バカ猫!ショウ様の為にも早くそこから脱出しろとロゼに悪態をつきながら、できるだけショウの体が痛まない様、後ろからショウを抱きしめるようにして引っ張った。

そのおかげか、さっきよりは中の人がだいぶ出てきたがそれでも黒い粘着物に絡まったまま抜け出せない。

しかも、少し気を緩ければ黒い粘着物によって外側の人の中にゴムのように引き戻されてしまう。3歩進んで2歩下がる状態だった。

ならばと、オブシディアンとシープも参戦した結果…しばらくの間、粘ったかいがあり


…ボトッ…!!!


一人の少年が、ロゼの体の中から出てきて床に落ちた。と、同時にショウは今までにないくらい全力で体力を使い果たしたせいで腕に力が入らなくなり少年を床に落っことしてしまうと、サクラと共に勢いよく後ろに倒れ

「…ヒャッ!!」

サクラが下敷きになりそうだったので、衝撃に備えサクラはグッと腹に力を入れた。
一瞬の出来事だったので魔導が間に合わなかったのだ。

「……ッッ!!!」

しかし、その後ろでサクラの腰を引っ張っていたオブシディアンは咄嗟に風の魔導を使い、後ろに倒れるオブシディアンの腰を引っ張っていたシープを含めみんなの衝撃を防ぎ静かに床に下ろした。

みんな、ホッとしたのも束の間。

ロゼを飲み込もうとしていた外側の人はそのまま、魂が向けた様にベットに倒れ…何やらウニャウニャと黒い靄に包まれ徐々に髪や体が変わってきた。

あまりの異様さに、ベットに倒れている人にみんな注目した。

すると


そこには、この世の者とは思えない程の
もはや、美し過ぎて恐怖を感じてしまう程の美の集大成とでもいうのか

これ以上ないくらいの美貌の少年が眠っていた。

それこそ、髪は黒真珠の様に上品で艶やかで長いウエーブがかった髪は先端にいくほどに紫色のグラデーションになっている。
肌も真っ黒で、傷一つない陶器のようにつるりとしている。

まだ、目は開かなくとも分かる。眠った状態でこの美貌だ。目を開けたならば、どんな目をしているのか。

少年の恐ろしいまでの美貌と異常なまでの魔性ともとれるフェロモンに、シープはあてられ欲情してしまった。全身から力が抜けトロリとした表情になり息が上がってしまっている。
今すぐにでも少年の側に行ってこの欲情しきった体をどうにかしてほしい気持ちだ。

…だが、オブシディアンがすぐ側にいる。
シープは、力が入らない体を必死に動かし何とかオブシディアンの手を握りぎゅっと目を瞑りそれに抗った。

オブシディアンもまた少年のフェロモンに誘惑され無意識に少年に近づこうと体が動いていた。が、シープに手を握られた事によりハッと我に返りシープを見た。

シープは欲情しきった顔で自分を見上げていた。おそらく、情けないが今の自分もそんな表情をしているのだろう。
…この時ばかりは包帯で顔が隠れていて良かった。こんなみっともない顔を誰にも見られなくて良かった。そう思うオブシディアンだった。

しかし、淫魔の類なのか…少年には、人を魅了する力…或いは他を寄せ付けない圧倒的な美貌で人の心を奪ってしまう何かがある。

彼に尽くしたい、命令されたい、褒められたい…愛されたい、という彼に屈服したい欲求がドンドン湧いてくる。

まるで、自ら彼の奴隷になる事を望むような…

…ああ、彼の為に何かしたい

少しでもいい…その美しい指先だけでもいいから自分に触れてほしい…ほしい、ほしい…彼がほしい…

少年が、寝ている状態でこれだ。

もし、この少年が目を覚ましたら…そう思うと恐ろしく思う。


オブシディアンは、思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

色仕掛けに対する厳しい訓練も行ってきたにも関わらずこれだ。そんな訓練なんて意味がなかったかのように少年に魅了されている自分がいる。

そんなオブシディアンにシープは必死に何かを訴え掛けようとしている。その気持ちの表れか、シープの手に力がこもっていた。

『…ありがとう。シープのおかげで何とか自我を保てた。』

そう、シープに声を掛けるとシープはホッとしたように少し笑い気を失った。

さて、どうしたものかとオブシディアンは気を失ったシープを抱き上げショウとサクラを見た。

すると、ショウはすかさず床に落ちた少年の頭を撫で

「…ロゼ!ロゼ、大丈夫?」

と、声を掛けた。何度もロゼに呼びかけるショウの声に反応し


「…ん、んぅ〜…」

ロゼは、目を覚ました。

ロゼの無事を確認できてショウはホッとし、嬉しくて大泣きしながらロゼに抱きついた。

ロゼは、少年にしてはしっかりとした体でショウを受け止め


「…お主様っ!!」

と、感極まった声でショウの名前を呼んだ。

ロゼらしき少年を見て、サクラ達は驚いた。


だって、さっきまで見ていたロゼの容姿とは全然違うから。

今まで見ていたロゼの姿に似ているのはどちらかと言うとベットで眠っている少年の方だ。
そっちの方がロゼだと思ってしまう。

ショウと抱き合っている少年は、オブシディアンが見たところ

体つきはまだ未発達で顔も幼さが残っている事から年は12才〜15才くらいだと想定した。髪の色も黒い。

そして、ロゼ特有の肩や背中に白いタトゥーの様な模様がある。そこまでは、自分達の知っているロゼと同じだ。

だが、ここからが違う。

髪の色は黒いが、よくよく凝らして見れば闇夜の様に僅かに青みがかっている。そして、光の具合により星空を閉じ込めた様な様々な顔を覗かせる夜空へと変わる。

目の色は、濃いグレーの様に見えるがやはり角度や光などにより美しい夜空を思わせる。

まぶたは、アイシャドウを塗っているようにインディゴブルーの様な深く濃い青色がグラデーションで美しく彼の瞼を彩り更に魅力を引き立たせている。

爪の色もネイルをした様なインディゴブルー色。

肌の色は健康的な小麦色。
全体的に筋肉質で、胸が厚くガッシリしている。だが、腰は細く、所謂、逆三角形というやつだ。逞しくも美しい造形美の様な体をしている。

年齢の割に身長は高い。およそ180cmくらいはありそうだ。これから成長したら、どれ程までに大きくなるのだろうか。

顔立ちはヴィランっぽいが、そこがワイルドで魅力的に感じる。それでいて、危険な香りのするスリリングな色気もあった。

まるで、全ての夜空を閉じ込めた様なそんな美しさがロゼにはあった。


聞きたい事は山ほどあるが、どうやらロゼは何かに飲み込まれそうになっていた。だが、長い間それに抗い逃れようともがき苦しんでいた様だ。

今、ようやくそれから解放され大好きなショウに荒ぶる心を慰めてもらっている。
あのサクラでさえ、ショウを取られムスッとしているもののグッと我慢し少し離れた所から二人の様子を見ていた。

なので、今はそっとしておくのがベストだろうとオブシディアンは小さく笑った。

しばらくして、ロゼもようやく落ち着きを取り戻しホッとした所で、一気に緊張の尾が切れたのだろう。ショウに抱きついたまま安心しきった様に眠ってしまった。

身長の大きいロゼの力が抜け、ショウにもたれ掛かった事でショウはロゼを支えきれず後ろに倒れそうになって慌てていた。

それをサクラが受け止め、眠っているロゼをゴロリと床に雑に転がし、裸のロゼを見てショウ様の目の毒だと布団を被せておいた。

色々と落ち着いた所で、ショウはようやくベットに眠っている少年を見た。

サクラ達もこの少年をどうするべきか悩んでいた所だ。迂闊に近づけば、何が起こるか分からないからだ。下手に近づけば自分達もあの少年の中に飲み込まれてしまうかもしれない恐れもある。

オブシディアンは、この状況をリュウキに報告しなければと言葉飛ばしを行おうとした時だった。

「…空っぽだ…」

と、ショウは言った。

…え?と、サクラとオブシディアンが思った時には、ショウは立ち上がりあの少年の前に立っていた。


「しょ、ショウ様!!?危険です!離れて下さい!!」


サクラ達が、ちょっと目を離した隙にショウは少年の所に行ってしまった。

少年のフェロモンに引き寄せられてしまったのかもしれない。

サクラとオブシディアンは、しまった!!と、少年からショウを引き剥がそうと慌ててショウに手を伸ばし駆け寄った。

その頃には、少年の色香に当てられたシープも復活し目を覚ました。
すると、ショウの名を呼び慌てるサクラとオブシディアンの後ろ姿が見え、何事かと一気に目が覚め飛び上がった。


慌てる二人をよそにショウは少年を見つめ


「…私の事、呼んだ?」

と、少年の顔に触れようとしていた。

それをすんでの所で、オブシディアンがショウのおデコとお腹に手を回し少年からショウを離し、驚くほどのスピードでそこからロゼのいる場所まで離れた。


『…ま、間に合って良かった…!』

「……助かった。」

珍しくサクラがオブシディアンに礼を言うと、すぐさまオブシディアンからショウを奪い返してギュッと抱きしめた。


「…ショウ様!心配させないで下さい。」

思い余って少し大きめの声でショウを叱りつけたサクラの体は小刻みに震えている。

「…どうして、あの少年の元へ行ったのですか?何があるか分からない状態で迂闊に近づいては危険だったんですよ?分かりますか?」

切羽詰まったようにショウにお説教するサクラに、ようやく自分がサクラを心配させる様な事をしたんだと気づいたショウはションボリした。


「…ごめんなさい…」

「…はい。ですが、ショウ様が無事で安心しました。」

と、今度は優しく抱きしめてくれたサクラにショウは落ち込んだけど、サクラのショウを思う気持ちが嬉しくて。でも、サクラに嫌な思いさせちゃったな…ごめんなさいって切ない気持ちになっていた。

それから間もなくして


ドアをノックする音が聞こえた。

誰だろうかとサクラ達は不審に思ったが


『6人ほどの気配。その中に大聖女の気配もある。』

と、オブシディアンが言った所で


「休んでいる所、申し訳ありません。私達は大聖堂から来ました神官です。この国に関わる大事な話がありここに来ました。」

中年の男性らしき人の声がし、オブシディアンとサクラはアイコンタクトをとりドアを開けた。

すると、そこには一度だけ遠くから見た事のある面々が立っていた。

大聖女、聖女二人、大神官、兵二人だ。


「突然、申し訳ありません。ここにディヴァイン様の気配を感じましたので来ました。」

そう言って大聖女は、部屋の中を見渡しある所を見た所でハッとした表情をし

「…ディヴァイン様っ!!?」

乱雑にベットに置かれた様な形で、眠っている少年を見つけ酷く驚いた様に大聖女は人の目も憚らず少年に駆け寄って行った。

「…何と神々しい…美しい…。
間違いありません。この方は、私達の王ディヴァイン様です。ようやく…ようやく、会えました。」

と、感動で震える大聖女は、感動…そしてあまりの美しさに少年の頬に触れようと手を伸ばした。その瞬間だった。


…パキンッ!!!

「……えっ!!?」

敵から少年を守るかのごとく、一瞬の内に少年は分厚い黒ダイヤに覆われ中に閉じ込められてしまった。

大聖女が驚きで固まり、後ろでは聖女や大神官達も驚き狼狽えていた。

しかし、黒く透明な宝石の中にいる少年の美しさは異様で大聖女達の心を魅了しウットリさせていた。

近くにいる大聖女は少年のあまりの美貌にペタリと腰を抜かし、聖女や兵達は全身から力が抜けヘニャヘニャ〜っと気持ち良く気を失ってしまっていた。

そんな緊急事態だからこそと大聖女は、気を引き締め少年が閉じ込められている黒ダイヤをシーツで覆い

「起きて下さい!!ディヴァイン様をお運びして下さい。」

と、少年のあまりの美貌に当てられ気を失っていた兵を起こそうと声を掛け部屋から少年を運び出させようとしていた。