イケメン従者とおぶた姫。

一方、ヨウコウ達は強制的に実家へ連れ戻されていた。

理由は、試験失格を言い渡されたから。


ショウが居なくなり、ヨウコウ達は邪魔者が居なくなったとばかりに喜びそのまま旅を続けていた。

…だが、ヨウコウ達の気持ちとは裏腹に、ビーストキングダムの魔物達は進むにつれ強く数も増えていき…天候もあれに荒れていて本当に過酷な旅だった。

しかし、それを乗り越え

ビーストキングダムに来た証拠となる印をもらいに城へと入った。
ビーストキングダム国王に会い印をもらえる。さて、次に向かう国はと一行が考えていた時だった。



「ヨウコウ王子、失格。」


と、国王に言い渡されたのだ。

一行は驚きを隠せず、無礼を承知で国王に尋ねた。


「何故ですか?何故、我々が失格なのですか!?確か、我々が一番早くにここに辿り着いたのですよね?」


すると、国王は一行に聞いた。


「時に、護衛達よ。お前達は一番に誰を守りながら旅をしていたか。」


その問いに、ゴウランとミオは戸惑いながらも


「…王子です。」


ゴウランとミオは答えた。


「…うむ。では、聞く。
ヨウコウよ。お前は、一番に誰を守りながら旅をしてきたか。」


そうヨウコウは問われ、そこで
ミミを抜かした一行は、ハッとした。

そして、何も答えられずダラダラと嫌な汗を流し俯いてしまった。



「護衛は王の為に。王は民の為に。民が居てこその国なのだ。民がいなければ国など守る事もできん。
なのに、なぜ王が守るべき民がそこにいないのだ?」


と、国王は言い残し去って行ってしまったのだ。



あれから、すぐに

ヨウコウは自暴自棄になり、豪遊や女遊びが派手になっていった。
それを最初こそ止めようと必死になっていたゴウランだったが、いつしか自分も一緒になって派手に遊んでいた。

ミオは、すっかり塞ぎ込んでしまって部屋に引きこもってしまっている。

ミミは、メイドの職を失い実家に強制的に帰らされた。あーあ、王子様もゴウラン様もすごくイケメンで一緒にいられて最高だったのになぁ。

と、身分が違いすぎるので妻や側室は無理でも、あわよくば二人のうちどちらかの愛人を狙っていたので旅ができなくなってとても残念に思っていた。

現に、旅の前半からヨウコウ、ゴウラン
二人となかなかいい雰囲気になっていた。

実は、二人とはもう体の関係を持っちゃってるのだから期待してしまうのも仕方がない。

ミオは、そんな三人に我関せずであったが。


あれから、1ヶ月と少し経った頃。

ヨウコウ達は、ゴウランの父である将官に呼び出され



「お前達に朗報だ。ショウの病気が治ったらしく旅を続ける事ができるようになった。
次は、くれぐれもショウを放置などしないようにな。これが最後の情けだ。
今度こそ、失敗は許されんぞ!」



と、げきを飛ばされ。一行は、また旅を続ける事を許された。

今度は失敗しない!一行は、そう強く心に誓った。

そして、ヨウコウとゴウランは思った。
自分達が、こんな目にあったのは何もかもあのブタのせいだと。


そして、旅の再開はビーストキングダムの入り口からという事となった。

他の王子達は、今どこを旅しているのか。

自分達は、あのお荷物を抱えどこまで
他の王子達に追いつけるのか焦るばかりだ。


そんな事を考えていた時だった。


ヨウコウ達は、ビーストキングダムの入り口近くの比較的良質な宿屋に連れて来られていた。

と、いうのも自分達の実家にタクシーの迎えが来て乗ったところ、無条件でここに連れて来られタクシーの運転手に

「この宿屋のロビーに待機する様に言い使ってます。」

と、言われ、言われるがままヨウコウとゴウランがロビーに入ると既にミオの姿があり、ヨウコウ達から少し遅れる事十数分ミミが到着した。


そして、そのあと入ってきた人物にヨウコウは驚いた。



「待たせて、すまなかったな!」


そう言って入ってきた人物は

白金髪でボーズ頭。体は2メートル超える大柄でプロレスラーのような鋼の肉体。顔や腕などには、たくさんの古傷だらけ。

目は小さく、そばかすの極々平凡な優しそうな顔の…………女。

着ているものは質素で、どこの平民かと思ってしまう。

丸腰で武器など持ってないように見える。


しかし、この人物は…



「…き、騎士団長!!」



ヨウコウは、自分達の前に現れた人物に驚きを隠せずいた。

なぜ、この人が?

ヨウコウの言葉に、ゴウラン達は驚き床に膝をついた。ミミは、ゴウラン達の様子にきょどりながらも見習いよく分からないまま頭を下げた。

なにせ、驚く事なかれ

この商工王国騎士団長は、あの商工王国国王が自分の右腕だと絶賛した人物。

副騎士団長と共に、ある戦で英雄だと名を轟かせ幾多の戦場で活躍するもの凄い人物なのだ。

だが、その見た目から
ゴウランとミオは、本当にこの人が噂の騎士団長なのか?ヨウコウの勘違いじゃないのか?と、首を傾げていた。

だって、肉体は凄い。物凄い。
男のプロレスラーかと思ってしまうくらいに。おっぱいがなかったら絶対、男だと思ってた。

でも、このノホホンとした顔に、平民の服を着て武器すら持ってないこの人物が…?


騎士団長は、ドカリとロビーの椅子に座ると


「そんなに、かしこまらなくていいぞ!
私はかたっ苦しいのが苦手なんだ。アッハッハ!」


と、豪快に笑っていた。

いや…むしろ、この人の性別…男なんじゃ…とも思ったが、ボインと大きな胸だけは性別を主張していた。

ヨウコウ達は騎士団長に促されるまま
向かいの椅子に座り、そこでヨウコウは


「…何故、あなたのような多忙な方がここにいるのですか?」


と、王子にも関わらず敬意をはらい敬語で話していた。その様子に、ゴウラン達もこの騎士団長はそれほどの人物なのだと体を硬直させていた。



「ああ。私は、ちょ〜っとばかり怪我してまってな。仕事を休んでいて暇だったんだ。」


つまりは、暇つぶしって事だ。


「まあ、それはさて置きだ。王位後継者の順位争いでお前らやらかしてしまったらしいな。」


その言葉に、一行は苦い顔をした。


「お前らが失格って事で、王位実力6位の王女が繰り上がって王位後継承権の資格を得た。だが、どうしてだかお前は、
また王位後継承権を得られ旅を許された。

何故、王はお前たちにそんなに甘いのか。

あの王が、そんな甘い事をぬかすことなんざ考えられないんだよ。」



そう言われ、ヨウコウ達は何とも言えない顔をしていた。

だって、自分達もそう思うから。


「そこで考えられるのが、お前達のうち誰か一人でもソレに該当するようなポテンシャルを持ったヤツがいる。
失格にして落としてしまうのが勿体ないともう一度チャンスを与えられた。

それか……」



と、騎士団長は一行の一人一人をジッと見ていき何か考えてる風だった。

緊張の走る中、騎士団長は



「見ても分かんねーわ!アッハッハ!」


と、豪快に笑い


「そうだ、忘れてた。
おーい!コッチ来ていいぞ!」


何かを思い出したかのように二階を見上げると、3人ほど二階から降りてきて騎士団長の近くに並んだ。



「紹介しよう。コイツが、今回の事で
繰り上がり王位継承権を得て旅を許された第二王女の虹(こう)だ。年は、21才。」


そう紹介された姫は
色白で、腰まで長いストレートの黒髪。
目の色は海色の凛とした純和風美女。
スラっとしていて身長は175センチはあるだろうか?高身長である。

武器はレイピアと…何の素材で出来ているのか見た事のない彼女の身長の高さ程の美しい棒を装備している。


「次が、護衛の大牙(たいが)。年は19才。」


護衛は、身長が平均よりやや低めで
165センチくらいあるだろうか?体型はいたって普通に見える。
真っ黒な肌に短髪の赤毛、眉毛がゲジゲジの少しヤンチャ坊主を思わせる平凡な顔立ちである。

武器は、クロスボウ(超小型の弓のようなもの)と双剣を装備している。


「そして、一般市民から選ばれた、沙良(サラ)で年は24才だ。サラは、武器術の全国大会で入賞、火の魔法もCクラスと何かと優秀だと聞いた。」


サラは、ボン・キュッ・ボンの魅惑的な
ナイスなボディーで少し褐色気味な肌がますますセクシーで魅力的だ。
肌の露出も大胆で男性陣にとって最高である。

肩より少し長めのウェーブがかった栗色の髪、垂れ目がちなのグリーンの目の色をしている。唇も少し大きめでぷっくり艶やか。とってもセクシーな美女であった。

武器は、鞭と弓。深くスリットの入ったスカートの中にも何か武器を隠し持っていそうだ。


「あとは、一般市民から“ショウ”という12才の子供が参加するらしいが、そいつは事情があって参加はもう少し先になりそうだ。」



ショウの名前を聞いて、ヨウコウとゴウラン、ミミはげんなりしていた。あー…あのブタな、ハイハイ。みたいな。

ミオは、ショウの名前を聞いて何故か少し顔を伏せていた。


「ここで本題に入るのだが。
ヨウコウ達は、一度失格しているからな。ハンデとして、ここビーストキングダムの入り口から出直しになった。

コウは突然の旅の命令。他の後継者候補達は、みな、もうビーストキングダムの印をもらい次へと向かっている者が多いというのに。これではあまりに条件が悪いと判断され特別にここからの出発となる。」



なるほどな、と、それにはヨウコウ達も納得し聞いていた。



「そして、もう一つ。ショウについてだ。
実はな、ショウは選ばれた他の一般市民
(優れた一般人)と違い、無能どころか色々と底辺をいくヤツらしい。何かの手違いで、誰かと間違えられ選ばれてしまったらしいが…。

そんな足手まといを旅に同行させてしまった詫びだと、ヨウコウ達の旅の許可が許されたらしい。」


…ああ、手違いな。

なるほど、納得だわと、ヨウコウ達は遠い目をして騎士団長の話を聞いていた。


「そこでだ、ヨウコウ。手違いの詫びに
お前に自分の旅の仲間を決める決定権を与える。ショウを含めた、ここにいるメンバーから自分の旅の仲間となる者を決めろ。

お前の仲間から外されたヤツらは必然的にコウの仲間になる。

ただ、ショウを選んだ場合に限り、護衛は二人得られる。ショウを選ばないのであれば、護衛は一人だ。」


と、騎士団長はニカっと笑い言ってきた。

ヨウコウは迷わず


「余のメンバーの一人はゴウラン。あとは…」


自分の幼なじみで大親友のゴウランを選んだ。しかし、次が見つからない。

ここで、一般市民からサラを選ぶのは無難だ。

だが、ミオも惜しいのだ。一緒に旅をしていてミオの実力は知っている。

ぶっちゃけ、悔しくて認めたくないが
魔法を使えないミオだが、それに余りあるくらいの武器術の実力と判断力。実戦に強い。

ミオがいなければ、ビーストキングダムの城まで無事に辿り着く事は…難しかっただろうと思う。

しかし、ここでミオも選んでしまえば
足手まとい、お荷物でしかないあのブタまでくっ付いてきてしまう事になる。


…さて、どうしようか?


と、悩んでいると



「…なぜ、そんなに悩むか?」



コウが、ヨウコウに問い掛けてきた。

ヨウコウは、あまりに悩みすぎたせいか
自分の考えをありのままにコウに説明した。

それには、ゴウランとミオはそんな大事な事をライバルに話していいものかと驚いていた。

すると



「分かった。なら、こうしないか?
ヨウコウ殿は護衛を二人連れ、一般市民からサラを連れて行けばいい。
ショウという足手まといのお荷物は、私が引き取ろう。なんなら、そのショウとかというものと私二人きりで旅をしても構わないが?」



そう、言ってきたのだ。

それには、ヨウコウ達をはじめ騎士団長も驚いていた。…が、騎士団長は、何か思い当たる事があるらしく納得したような顔をして二人のやり取りを面白そうに眺めていた。


「…いや!しかし!
本当に、あのブタは何もできないのだぞ?
生まれが貧民なのか、箸どころかスプーンも使えない。一人で風呂にも入れない。大ブタ過ぎてまともに歩けない!他にも……」


コウが、あんな事を言うものだから
馬鹿にされた気持ちになったヨウコウは、いかにショウがダメダメなのか、そのせいで自分達がどれだけ大変な思いをしたのかと必死になって訴えかけショウの悪口を言いたい放題言っていた。

なのに、彼女は表情一つ変えず


「問題ない。」


と、答えてきたのだ。

彼女の発言にみんな驚くばかりだ。


「コウ殿は、実際にあのブタに会ってないし一緒にいた事もないから分からないのだ!どれほど、鬱陶しく邪魔な存在なのか。」


これだと、自分がコウより劣る人物に見えてしまうと、ヨウコウは自分を取り繕うようにショウのダメ出しをし

こんなのを連れて歩いていた自分を、むしろ褒めろと言わんばかりの事まで言ってきた。


それにはゴウランとミミもうんうんと頷き、ヨウコウと一緒になってショウがいかにダメなのか熱弁していた。

もう同じ様な事をループして喋っていたが、それほど邪魔な存在だったという事がうかがえた。


これでは、話の決着がつかないと判断した騎士団長は、面倒くさそうに頭をボリボリ掻きながら


「今日のところはここでお開きだ。
ヨウコウ。明日の朝までに、自分の仲間を決めろ。明日、また話を聞きに来る。」


そう言って、宿から出て行った。

一行は、一人一部屋づつ用意された部屋に各自入って行った。


ヨウコウは、ゴウランを自分の部屋に呼びつけ誰を仲間にするか相談していた。



「…しっかしさ。あのコウ姫、めちゃくちゃ美人だったけど変な人だったよな。
あのブタと二人だけで旅しても構わないとか言っちゃってさ。実際にあのブタと関わってないからそんな事言えんだよな。

それに、旅の事も舐め過ぎてるぜ。」


ゴウランは、コウの態度や言い草に腹が立っていたのだろう。イライラした風にそんな事を言ってきた。


「王位継承一位が期待されるお前でさえ、旅で苦戦してるってのに。
たかだか、王位実力6位のやつだろ?
えっらそうにさ!」


ゴウランは、腕組みをし椅子に座りながらイライラと貧乏ゆすりをしていた。

しかし、ヨウコウは浮かない顔をし俯いているのに気がついた。


「どうした?」


そう、問い掛けるとヨウコウは



「…知っているか?コウ姫の噂。」


「…噂?」


と、何か思い詰めたように俯きながら話してきた。


「…実は、コウ姫こそ王位実力一位らしい話を聞いた事がある。しかも、俺達とは比べ物にならない程の実力があるらしい。」


その話を聞いて、一瞬ゴウランは驚くが


「それは、ないだろ。
だって、今、ヨウコウ様が王位実力一位って肩書きがある。それが何より証拠だろ。

もし、仮にコウ姫が実力が一番あったとして年齢が21才だろ?ヨウコウ様は14才。ヨウコウ様は、まだ体も精神的にも成長過程にあるんだ。それを見通しての順位だろ。

なに、弱気になってるんだ。お前らしくないぞ。」


まさか、そんな事あり得ないだろと笑っていた。


「…違うんだ。最初こそ、コウ姫が王位実力一位だったのは事実。
だが、どういう訳か王位継承を辞退し、繰り上がって余が…王位実力一位の座についただけなのだ。」


ヨウコウの言葉に、ゴウランは驚きを隠せずいた。ヨウコウは、様々に卒なくこなし優秀で身のこなしも気品溢れ王子そのものだ。

ヨウコウが王になったとしても誰も文句がないだろうと思う。

だから、ヨウコウが王位実力一位をもらった時もヨウコウなら当たり前だと思っていた。

それが…



「しかも、コウ姫は大学にいく傍ら
騎士団第三部隊に仮入隊している。
その実力は折り紙付きで将来、部隊長…もしくはそれ以上になるだろうとも言われている。」


その話を聞き、ゴウランはゴクリと喉を鳴らした。


「人の話だと、戦場でのコウ姫は
残虐・無慈悲で、戦場にはもってこいの人物と聞いた。」


「…とんでもないな。
だから、あのブタと二人だけで旅してもいいなんて言えるのか。そのくらい自信があるって事か…。」


コウ姫の話をしていて、二人はしばらくの間沈黙し考えた。

コウ姫がいう通り、ブタを居なくしてしまえば旅は楽なのだが。それでは、自分達のプライドが許さないし、自分達がコウ姫に劣っていると認めてしまったようで屈辱でしかない。


なら、考えろ。


今の状況で自分達にとって一番最善の策を…


二人は悩みに悩み、夜が明け朝がやってきた。決断の時だ。ここで間違えたら、今後に大きく関わるだろう。



………………



昨日と同じ場所のロビー。
みんなが集まったところで


「決めたか?」


騎士団長は、ヨウコウにたずねた。

すると、ヨウコウは頷き


「余の旅の仲間は、まずはゴウラン。
次に、ミオ。一般人からショウにする。」


と、言ってきた。その答えに、騎士団長は


「分かった。なら、残ったタイガとサラはコウの旅の仲間とする。
ミミは、前の時と変わらずヨウコウとゴウランの世話をしろ。」


と、何か引っかかる事を言ってきた。

ミミは、以前…ヨウコウとショウの
世話をしてもらう為に用意されたメイドであったはず。

なのに、何かの聞き間違いか…この騎士団長は、ミミに“前の時と変わらずヨウコウとゴウランの世話をしろ”と言った。

その事に関し、コウ姫以外
みんな不思議そうな顔をしていた。

そもそも旅にメイド付きなんて、どうなってんだ?と、タイガとサラは
ヨウコウ達は依怙贔屓されるにしてもほどがあるとムカついていた。


「ああ、そうそう!
ショウの事なんだが…ショウの父親がな。
最近、娘といい感じだから娘を旅に出したくないとかほざきはじめてな。
ショウが旅に参加するのは、父親の我がままから二週間ほど先に延期になった。」



と、困ったヤツだなと笑っていたが、
どうしてだろう?騎士団長はとても嬉しそうに見える。


娘も娘なら親も親だなと、ヨウコウと
ゴウラン、ミミは親の顔を見てみたいもんだとイラついたが

二週間は、邪魔者がいなく快適な旅ができるのかと内心喜んでいた。



「あと、もう一つ……ま、その時が来たらで、いっか!アッハッハ!」