コクレンの奥さんの声は、酒焼けでもしてるのかと思う程ガラガラでしゃがれた声で喋り方も呂律がしっかりしてないので何だか酔っ払いの話を聞いている気持ちになる。
コクレンの奥さんは、コクレンの中に体を封印という形でコクレンにその身を守ってもらえるのだが。
コクレンの中からしっかりと見聞きはできているようだ。
「…えっと。コクレン様の奥さん、頭の方大丈夫?酔っ払ってる?ダリアは、この世界最強の魔導士だよ?
彼無くして異世界の鬼に対抗できない、必要不可欠な人物だよ?
なのに、ダリアを召喚従にしてはいけないってどういう事なの?」
と、コクレンの奥さんを酔っ払い扱いしたシープが、飽きているのか馴れ馴れしくコクレンの奥さんに質問してきた。
「俺も同意見だ。何で、そんないい加減な事言ってるのか分からないけどふざけないでほしい。
今、こっちは色んな問題が重なって大変な事になってるんだ。少し、大人しくしてもらえないですか?」
次に、こんな真剣な場に似つかわしくないふざけた発言や喋り方をしているコクレンの奥さんにイライラしながら、キレそうな気持ちを抑えどうにか平静を保ちゴウランもシープに続き意見した。
各精霊王達が、今だけは自分達と対等に自由に話す事を許すとは言っていたが若さが故か怖いもの知らずなのか、二人は少し踏み込み過ぎている気がする。
ましてや、話に流れで
コクレン、ヴォイド、クエーサーは各精霊王達よりもずっと身分が上のようだ。
特に、コクレンはおそらく上から数えた方が早いくらいの普通お目に掛かれる様な人物ではないだろう。
コクレンの本当の居場所である異世界では特にだ。
そんなコクレンの奥さんに、向かってそんな舐めた口を聞いては良くない。
だが、今緊急の場だからか、コクレンもコクレンの奥さんもそれを咎めず普通に接している。
このやり取りに、各精霊王はハラハラしながら様子を伺っている。きっと、生きた心地がしてないだろう。
かくゆうオブシディアンもそうなのだから。
ただいま、胃はキリキリ強い吐き気とこれは夢であってほしいと現実逃避したい気分を味わっている。
この会議が終わったら、二人に少しお説教をしようと思うオブシディアンである。
「それ以前の問題だよ。」
二人の質問に答えるコクレンの奥さん。
その言葉に、首を傾げる一同。
「このまま、ショウが世界に散らばっているダリアの肉体と魂を納める器を集めダリアを召喚従にした途端に、この世界は滅びるよ。」
なんて、とんでもない事を言い出してきたのだ。
その言葉に、サクラやリュウキ、オブシディアン、各精霊王達は“ダリアならやりかねない”と、思ってしまった。
何故なら、ダリアは色々と悪さしていた前科があるからだ。
いくら、ようやく今回をもってダリアは猛省し改心したといっても、改心したばかりで本当に改心したかどうか疑わしい所もある。
もし、本当に“その時”改心したとしても、その気持ちが持続するとは限らず、またあの性悪超最低最悪男に戻るか分からない。
ダリアの今までが今までなだけに、サクラやリュウキ達はダリアの事を信用できていなかったのだ。
ところがだ。
「別にダリアがこの世界を滅ぼす訳じゃないよ。
アタシが見る限り、ダリアはこの世界のショウ達に深く感謝して今の生活がある事に幸せを噛み締めているよ。
夢のようだとこれ以上ない幸せだと日々感謝して生きているくらいだ。
そんなダリアが、世界を滅ぼすなんてアタシには思えないし、そんな未来は今は見えないね。」
そう、言ってきたのだ。
なら、何故ダリアをショウの召喚従にするのをやめなければならないのか。
首を傾げる一同であったが、そこでリュウキがハッとした顔をして
「…まさか、ショウか!?」
と、言ってきたのである。
リュウキのまさかの発言に、一同はリュウキに注目する。すると
「御名答。さすが、アタシの娘の婿だけあるね。」
なんて、コクレンの腹あたりからコクレンの奥さんが姿こそ見えないがドヤッとしてるであろう想像がつくような声とリズムで言ってきた。
それに対し、みんなの頭の上に「???」が浮かび何をおかしな事を言ってるんだとばかりな顔をしている。
そこに、オブシディアンもハッとした表情をしているのにシープは気付き、きっと何か理由があるんだと思った。
そこから、しばらくしてからようやく
「……へ?わ、私、何かいけない事しちゃった…??」
と、みんな難しい話していて一人置いてけぼりになっていたショウが、ダリアを召喚従にしてはいけないだのショウだの自分の名前まで出てきた事で
自分は何か良くない事をしているのだろうか?…だけど、心当たりがない。と、困惑して不安気にサクラとリュウキの顔を交互に見た。
すると
「大丈夫ですよ。ショウ様が悪い事をした訳ではありません。
…ただ、話次第ではショウ様の召喚従になる筈だったダリ……アイビーがショウ様の召喚従になれないかもしれないという話になっているのです。」
と、ショウにも分かりやすくゆっくり丁寧に教えてくれた。そこで、ようやく理解に追いついたショウは
「…え?アイビーが私の召喚従になってくれないの?」
と、サクラの説明を少し勘違いしてしまったようでショックを受けていた。そこを慌てて
「違いますよ、ショウ様!アイビーがショウ様の召喚従になりたくないという話ではないのです。
アイビーがショウ様の召喚従になれない何か事情があるようなので、今はその理由を聞いていた途中だったのです。」
忘れがちだが、ショウ達の旅は
いつ来るか分からない異世界の鬼対策で、今はこの世界には存在しないダリアの力を借りるべく
ダリアをショウの召喚従として、パラレルワールドからダリアを召喚したいのだ。その為に必要な材料を探す旅をしている。
必要な材料は
・この世界のダリアの遺体(これは、もう見つかっている。)
・パラレルワールドから呼び寄せたダリアの魂を遺体の中に留める為の魂の器だ。
何故、こんなものが必要か。それは
別世界に行けば、少なからず別世界に行った者に何かかしらの弊害が起こる。
だから、無理矢理パラレルワールドからダリアをこちらの世界に召喚した所でどんな弊害が起きるか分からないからだ。
だが、ダリアの遺体は見つかっても魂の器が何処にあるのか分からない。
なにせ、長い時間を掛けダリアを愛する者達が、他国を巻き込むなどとんでもない大きな争いを起こしてまでもそれを盗み出したり
長い時を経て話の内容もどんどん変わり“持っているだけで国が安泰する宝”と言われ何処かの城に献上されたり
怪盗に盗まれたりと色々渡り歩いて今や何処にあるのか分からない状態なのだ。
だから、ダリアの力が必要不可欠な、今。
今や改心し心を入れ替えたダリアの愛するショウを守りたいという強い希望もあり、ダリアをショウの召喚従にするべく、ダリアの体とダリアの魂を入れる器を探す旅に出ている。
---筈だったのだが
コクレンの奥さんの予知能力が発動し、ダリアを召喚従にしてはいけないという警告がなされたのだ。
その理由は、ショウのあるのではないかというリュウキにコクレンの奥さんはその通りだと言った。
一体、何故ダリアをショウの召喚従にしてはいけないのか。
その原因が、ショウとはどういう事なのか。
リュウキやオブシディアン、コクレンの奥さんは分かったがショウを含め他のみんなは理由がさっぱり分からず困惑している。
ショウを知り尽くすサクラでさえ首を傾げ、何故リュウキとオブシディアンが分かって自分が分からないんだ?
ショウ様の事に関してだけは、自分は誰よりも知っていると自負しているサクラはそれが気に入らなくムスッとしている。
きっと、自分が分からないのだから二人は何かを勘違いしているのだろうと思いつつも、ショウに関わる事なら他人がショウに対して、どの様な勘違いをしているのだろうが何だろうが分かりたいサクラ。
だから、二人の考えも想像のつかないサクラはやはり二人だけ分かっている風な雰囲気が気に入らない。二人の勘違いに決まっているが。
そんな様子のサクラにリュウキは苦笑いしてオブシディアンと目配せすると
「サクラとロゼには言いづらい事ではあるが、“もう一つの世界線”にはサクラとロゼ…そして、俺は存在しないようだ。」
と、リュウキが言ったところで、みんなサクラは元々ダリアの一部から生まれた存在なのでサクラが別の世界観に居ないのはは分かるが
何故、ロゼとリュウキがいないのか謎に思った。そして、何故それをリュウキが知っているのかも。
「…まあ、俺自身も色々あってな。夢かとも思ったんだが、一時期もう一つの世界線に数年間住んでいた事がある。」
なんて、衝撃的な事を言ってきた。みんな驚いてリュウキを凝視している。
「俺も、今の今まで“それ”は妙にリアルな夢だったと思っていたし、何か引っ掛かるものもあったんだが所詮は夢と割り切っていた。
だが、ここで様々な話を聞いていくうちに夢ではない実際にあった事なんだと確信した。
おそらくは、こちらと向こうの時の流れが違うのだろう。俺のとってこちらでは数時間の夢の出来事でも向こうでは数年の時が経っていたようだからな。
そこで体験したのは、名前は俺であっても“俺でない誰かに”俺はなっていた。だが、立場的に似たような立ち位置にはいたな。
そこで……俺の妻であるアクア…彼女はマナと名乗っていたな。マナと出会い恋人となり結婚してショウが彼女のお腹の中に宿った。
とても、幸せな時間だった。このまま、この世界で親子三人で暮らしたいと幸せを噛み締めていた時だった。
そしたら、目が覚めてこっちの世界にいた。
その夢の世界…
おそらく、もう一つの世界線では、サクラもロゼも俺も居なく代わりに生まれ変わったダリアが存在していた。
まだ、アクアの腹の中に宿ったばかりのショウ。
同時に、紫色の小さな光の生命体がまるでショウを守るかのようにアクアの腹にくっ付いてたからな。
直感で分かったな、これはダリアだと。
だが、俺達の知る最低最悪のクズではない事だけは見て直ぐに分かった。
そこで、俺はサクラとロゼの気配を探ったが、気配は一向に見つからなかった。
そこで、思い出したのが、ここは元を辿れば心を入れ替え改善したダリアの為の世界。
サクラやロゼ、俺が居ない方がダリアにとって都合のいい世界だからな。
おそらくだが、俺やサクラ、ロゼの居ない世界線なんだろう。」
と、話すリュウキの顔はとても複雑そうだった。
そして、次に話す言葉にサクラとロゼはショックを受ける事となる。
「その世界線でのダリアは、俺達の知るダリアではない。そのせいもあるだろう。向こうの世界線では、ショウとダリアは将来を誓い合った仲睦まじい恋人なのだろうと容易に想像できる。
だからこそ、頻繁にこの世界にショウの為に無理をしてくるダリアを向こうのショウは“浮気”だと騒ぎ立て、自分のダリアを奪おうとするショウに嫉妬して
“私のダリアを奪おうとするショウが許せない!
私の大切なダリアを危険な事に巻き込もうとするショウなんて消えればいいのに!”
そう思っている可能性が高いな。
だから、この世界を守る為にダリアの力は借りる事ができない。
向こうのショウが暴走して、ダリアを巡ってこちらの世界と向こうの世界での戦争が起こりかねない。
そんな感じだろうな。」
と、までリュウキが話したところで
「……婿殿は、とんでもないな。
天晴れとしか言いようがない…御名答だよ。」
コクレンの妻はリュウキの推測に恐れ入ったようで、驚きを隠せずいた。
その話を聞いてショックを受けるサクラとロゼ。
「…え?向こうのショウ様は、俺を選んでくれてない…そんな…!」
「……嘘にゃ!我でなく…あの憎っくきダリアとお主様が……ッッッ!!!?…嘘にゃっ!」
二人揃って絶望的な顔をして呆然としていた。そんな二人を見て、ショウはかなりのショックを受け
「…サクラも、ロゼも…“向こうの私”がいいの?二人にとって私は何なの?
二人共、私の事好きとか言って置いて!…これは、“浮気”だよ!酷いっ!!」
と、ショウは大泣きして、何となくそうくるだろうなと想定していたリュウキは
大泣きして癇癪を起こしているショウを自分の胸に抱き寄せ、苦笑いしながらショウの頭を撫でながら
大泣きして癇癪を起こしているショウに、どうしようとオロオロしているサクラとロゼに
「こんな感じだ。向こうのショウも素が俺らのショウだから、ダリアに対してもこんな感じで困らせているだろうと思う。
それにお前達は間違えてる。確かに、どの世界線であっても自分達は特別な関係でありたいという気持ちは分かるが。
お前達は、こちらのショウではなく“向こうのショウ”を愛しているのか?
まず、そこから考えてみてほしい。
“向こうのショウ”は、こちらの世界とは生まれ育った環境や状況が違う中で“俺やお前たちのいない世界”で生きている。
だから、根っこや芯の部分は同じでも、お前達が大好きなショウとは何かが違うはずだ。
そうだな。同じ人間であっても別の存在であるが分身ではない、別の人間だと考えてもいい。
そんな別の人間でもショウなら誰でもいいのか?ここに存在するショウを差し置いてまで、別の世界の別の人間であるショウと特別な存在になりたいというのか?
それは、確かに俺から見ても“浮気”にしか思えないな?
大好きなお前達に、そんな事を言われたショウの気持ちを考えての発言か?それなら、俺はお前達を軽蔑する。
そして、大切な愛娘を嫁にさせる訳にはいかないな。」
と、リュウキに言われた事で、理解が早いサクラとロゼはハッとし
「…ショウ様、申し訳ありません!そんなつもりではなかったのです。
…ただ、ショウ様と同じ姿形をし同じ魂を持った人間が、私以外の男性と恋人になっていた事。
その世界に私が存在しない事にショックを受けてしまったのです。
ですが!私がお仕えするのも恋人、結婚したいと思うのも私の目の前に居るショウ様しか考えられません。
別の世界のショウ様とどうにかなりたいとか、なろうとか一切考えてもないです。どうか、許してください!」
「お主様ぁ〜〜っ!
ちと、悔しゅうが我もサクラと同じ気持ちじゃぁ〜〜。
お主様の気持ちも考えられなかった事、ほんにすまぬと反省しておるゆえ許してはくれまいか?」
サクラは青ざめた顔をしてショウに綺麗な土下座を披露し今にも泣きそうになっているし、ロゼは図々しくもショウの顔面にヒシーっと抱きつきショウの顔にスゥーリスリして泣きながら、ごめんなさいと泣いていた。
サクラとロゼ、謝り方は全然違うが大袈裟すぎる所と必死さはソックリだなぁ〜と、みんな少々呆れ気味にサクラとロゼを見ていた。
だが、二人の熱意が通じたのかショウはホッペをぷくぅ〜と膨らませプンプン起こりながらも
「…うん、さっきのサクラとロゼの言葉とかショックだったけど。
…よく考えてみたら、向こうの私は向こうのサクラやロゼじゃなくて…ダリアと恋人なんだもんね。
それを知ったサクラやロゼの気持ち考えると、凄く嫌な気持ちになると思う。
私だって、向こうのショウがダリアと恋人だなんて信じられないし…ショックだけど。」
と、ショウは土下座するサクラの両頬を両手で挟み、自分と目が合うようにグイッと上を向かせロゼの方もチラッと見ると
「向こうは向こう!こっちはこっちだよ!私の天守で恋人は、サクラとロゼでしょ!!?
向こうのショウは違うでしょ!!」
なんて、怒りと嫉妬に任せてショウはビックリする発言をしてきたのだ。
その発言に、サクラやロゼだけでなくリュウキやオブシディアン、ゴウラン、シープまでもがビックリしてショウを凝視している。
コクレンの奥さんは、コクレンの中に体を封印という形でコクレンにその身を守ってもらえるのだが。
コクレンの中からしっかりと見聞きはできているようだ。
「…えっと。コクレン様の奥さん、頭の方大丈夫?酔っ払ってる?ダリアは、この世界最強の魔導士だよ?
彼無くして異世界の鬼に対抗できない、必要不可欠な人物だよ?
なのに、ダリアを召喚従にしてはいけないってどういう事なの?」
と、コクレンの奥さんを酔っ払い扱いしたシープが、飽きているのか馴れ馴れしくコクレンの奥さんに質問してきた。
「俺も同意見だ。何で、そんないい加減な事言ってるのか分からないけどふざけないでほしい。
今、こっちは色んな問題が重なって大変な事になってるんだ。少し、大人しくしてもらえないですか?」
次に、こんな真剣な場に似つかわしくないふざけた発言や喋り方をしているコクレンの奥さんにイライラしながら、キレそうな気持ちを抑えどうにか平静を保ちゴウランもシープに続き意見した。
各精霊王達が、今だけは自分達と対等に自由に話す事を許すとは言っていたが若さが故か怖いもの知らずなのか、二人は少し踏み込み過ぎている気がする。
ましてや、話に流れで
コクレン、ヴォイド、クエーサーは各精霊王達よりもずっと身分が上のようだ。
特に、コクレンはおそらく上から数えた方が早いくらいの普通お目に掛かれる様な人物ではないだろう。
コクレンの本当の居場所である異世界では特にだ。
そんなコクレンの奥さんに、向かってそんな舐めた口を聞いては良くない。
だが、今緊急の場だからか、コクレンもコクレンの奥さんもそれを咎めず普通に接している。
このやり取りに、各精霊王はハラハラしながら様子を伺っている。きっと、生きた心地がしてないだろう。
かくゆうオブシディアンもそうなのだから。
ただいま、胃はキリキリ強い吐き気とこれは夢であってほしいと現実逃避したい気分を味わっている。
この会議が終わったら、二人に少しお説教をしようと思うオブシディアンである。
「それ以前の問題だよ。」
二人の質問に答えるコクレンの奥さん。
その言葉に、首を傾げる一同。
「このまま、ショウが世界に散らばっているダリアの肉体と魂を納める器を集めダリアを召喚従にした途端に、この世界は滅びるよ。」
なんて、とんでもない事を言い出してきたのだ。
その言葉に、サクラやリュウキ、オブシディアン、各精霊王達は“ダリアならやりかねない”と、思ってしまった。
何故なら、ダリアは色々と悪さしていた前科があるからだ。
いくら、ようやく今回をもってダリアは猛省し改心したといっても、改心したばかりで本当に改心したかどうか疑わしい所もある。
もし、本当に“その時”改心したとしても、その気持ちが持続するとは限らず、またあの性悪超最低最悪男に戻るか分からない。
ダリアの今までが今までなだけに、サクラやリュウキ達はダリアの事を信用できていなかったのだ。
ところがだ。
「別にダリアがこの世界を滅ぼす訳じゃないよ。
アタシが見る限り、ダリアはこの世界のショウ達に深く感謝して今の生活がある事に幸せを噛み締めているよ。
夢のようだとこれ以上ない幸せだと日々感謝して生きているくらいだ。
そんなダリアが、世界を滅ぼすなんてアタシには思えないし、そんな未来は今は見えないね。」
そう、言ってきたのだ。
なら、何故ダリアをショウの召喚従にするのをやめなければならないのか。
首を傾げる一同であったが、そこでリュウキがハッとした顔をして
「…まさか、ショウか!?」
と、言ってきたのである。
リュウキのまさかの発言に、一同はリュウキに注目する。すると
「御名答。さすが、アタシの娘の婿だけあるね。」
なんて、コクレンの腹あたりからコクレンの奥さんが姿こそ見えないがドヤッとしてるであろう想像がつくような声とリズムで言ってきた。
それに対し、みんなの頭の上に「???」が浮かび何をおかしな事を言ってるんだとばかりな顔をしている。
そこに、オブシディアンもハッとした表情をしているのにシープは気付き、きっと何か理由があるんだと思った。
そこから、しばらくしてからようやく
「……へ?わ、私、何かいけない事しちゃった…??」
と、みんな難しい話していて一人置いてけぼりになっていたショウが、ダリアを召喚従にしてはいけないだのショウだの自分の名前まで出てきた事で
自分は何か良くない事をしているのだろうか?…だけど、心当たりがない。と、困惑して不安気にサクラとリュウキの顔を交互に見た。
すると
「大丈夫ですよ。ショウ様が悪い事をした訳ではありません。
…ただ、話次第ではショウ様の召喚従になる筈だったダリ……アイビーがショウ様の召喚従になれないかもしれないという話になっているのです。」
と、ショウにも分かりやすくゆっくり丁寧に教えてくれた。そこで、ようやく理解に追いついたショウは
「…え?アイビーが私の召喚従になってくれないの?」
と、サクラの説明を少し勘違いしてしまったようでショックを受けていた。そこを慌てて
「違いますよ、ショウ様!アイビーがショウ様の召喚従になりたくないという話ではないのです。
アイビーがショウ様の召喚従になれない何か事情があるようなので、今はその理由を聞いていた途中だったのです。」
忘れがちだが、ショウ達の旅は
いつ来るか分からない異世界の鬼対策で、今はこの世界には存在しないダリアの力を借りるべく
ダリアをショウの召喚従として、パラレルワールドからダリアを召喚したいのだ。その為に必要な材料を探す旅をしている。
必要な材料は
・この世界のダリアの遺体(これは、もう見つかっている。)
・パラレルワールドから呼び寄せたダリアの魂を遺体の中に留める為の魂の器だ。
何故、こんなものが必要か。それは
別世界に行けば、少なからず別世界に行った者に何かかしらの弊害が起こる。
だから、無理矢理パラレルワールドからダリアをこちらの世界に召喚した所でどんな弊害が起きるか分からないからだ。
だが、ダリアの遺体は見つかっても魂の器が何処にあるのか分からない。
なにせ、長い時間を掛けダリアを愛する者達が、他国を巻き込むなどとんでもない大きな争いを起こしてまでもそれを盗み出したり
長い時を経て話の内容もどんどん変わり“持っているだけで国が安泰する宝”と言われ何処かの城に献上されたり
怪盗に盗まれたりと色々渡り歩いて今や何処にあるのか分からない状態なのだ。
だから、ダリアの力が必要不可欠な、今。
今や改心し心を入れ替えたダリアの愛するショウを守りたいという強い希望もあり、ダリアをショウの召喚従にするべく、ダリアの体とダリアの魂を入れる器を探す旅に出ている。
---筈だったのだが
コクレンの奥さんの予知能力が発動し、ダリアを召喚従にしてはいけないという警告がなされたのだ。
その理由は、ショウのあるのではないかというリュウキにコクレンの奥さんはその通りだと言った。
一体、何故ダリアをショウの召喚従にしてはいけないのか。
その原因が、ショウとはどういう事なのか。
リュウキやオブシディアン、コクレンの奥さんは分かったがショウを含め他のみんなは理由がさっぱり分からず困惑している。
ショウを知り尽くすサクラでさえ首を傾げ、何故リュウキとオブシディアンが分かって自分が分からないんだ?
ショウ様の事に関してだけは、自分は誰よりも知っていると自負しているサクラはそれが気に入らなくムスッとしている。
きっと、自分が分からないのだから二人は何かを勘違いしているのだろうと思いつつも、ショウに関わる事なら他人がショウに対して、どの様な勘違いをしているのだろうが何だろうが分かりたいサクラ。
だから、二人の考えも想像のつかないサクラはやはり二人だけ分かっている風な雰囲気が気に入らない。二人の勘違いに決まっているが。
そんな様子のサクラにリュウキは苦笑いしてオブシディアンと目配せすると
「サクラとロゼには言いづらい事ではあるが、“もう一つの世界線”にはサクラとロゼ…そして、俺は存在しないようだ。」
と、リュウキが言ったところで、みんなサクラは元々ダリアの一部から生まれた存在なのでサクラが別の世界観に居ないのはは分かるが
何故、ロゼとリュウキがいないのか謎に思った。そして、何故それをリュウキが知っているのかも。
「…まあ、俺自身も色々あってな。夢かとも思ったんだが、一時期もう一つの世界線に数年間住んでいた事がある。」
なんて、衝撃的な事を言ってきた。みんな驚いてリュウキを凝視している。
「俺も、今の今まで“それ”は妙にリアルな夢だったと思っていたし、何か引っ掛かるものもあったんだが所詮は夢と割り切っていた。
だが、ここで様々な話を聞いていくうちに夢ではない実際にあった事なんだと確信した。
おそらくは、こちらと向こうの時の流れが違うのだろう。俺のとってこちらでは数時間の夢の出来事でも向こうでは数年の時が経っていたようだからな。
そこで体験したのは、名前は俺であっても“俺でない誰かに”俺はなっていた。だが、立場的に似たような立ち位置にはいたな。
そこで……俺の妻であるアクア…彼女はマナと名乗っていたな。マナと出会い恋人となり結婚してショウが彼女のお腹の中に宿った。
とても、幸せな時間だった。このまま、この世界で親子三人で暮らしたいと幸せを噛み締めていた時だった。
そしたら、目が覚めてこっちの世界にいた。
その夢の世界…
おそらく、もう一つの世界線では、サクラもロゼも俺も居なく代わりに生まれ変わったダリアが存在していた。
まだ、アクアの腹の中に宿ったばかりのショウ。
同時に、紫色の小さな光の生命体がまるでショウを守るかのようにアクアの腹にくっ付いてたからな。
直感で分かったな、これはダリアだと。
だが、俺達の知る最低最悪のクズではない事だけは見て直ぐに分かった。
そこで、俺はサクラとロゼの気配を探ったが、気配は一向に見つからなかった。
そこで、思い出したのが、ここは元を辿れば心を入れ替え改善したダリアの為の世界。
サクラやロゼ、俺が居ない方がダリアにとって都合のいい世界だからな。
おそらくだが、俺やサクラ、ロゼの居ない世界線なんだろう。」
と、話すリュウキの顔はとても複雑そうだった。
そして、次に話す言葉にサクラとロゼはショックを受ける事となる。
「その世界線でのダリアは、俺達の知るダリアではない。そのせいもあるだろう。向こうの世界線では、ショウとダリアは将来を誓い合った仲睦まじい恋人なのだろうと容易に想像できる。
だからこそ、頻繁にこの世界にショウの為に無理をしてくるダリアを向こうのショウは“浮気”だと騒ぎ立て、自分のダリアを奪おうとするショウに嫉妬して
“私のダリアを奪おうとするショウが許せない!
私の大切なダリアを危険な事に巻き込もうとするショウなんて消えればいいのに!”
そう思っている可能性が高いな。
だから、この世界を守る為にダリアの力は借りる事ができない。
向こうのショウが暴走して、ダリアを巡ってこちらの世界と向こうの世界での戦争が起こりかねない。
そんな感じだろうな。」
と、までリュウキが話したところで
「……婿殿は、とんでもないな。
天晴れとしか言いようがない…御名答だよ。」
コクレンの妻はリュウキの推測に恐れ入ったようで、驚きを隠せずいた。
その話を聞いてショックを受けるサクラとロゼ。
「…え?向こうのショウ様は、俺を選んでくれてない…そんな…!」
「……嘘にゃ!我でなく…あの憎っくきダリアとお主様が……ッッッ!!!?…嘘にゃっ!」
二人揃って絶望的な顔をして呆然としていた。そんな二人を見て、ショウはかなりのショックを受け
「…サクラも、ロゼも…“向こうの私”がいいの?二人にとって私は何なの?
二人共、私の事好きとか言って置いて!…これは、“浮気”だよ!酷いっ!!」
と、ショウは大泣きして、何となくそうくるだろうなと想定していたリュウキは
大泣きして癇癪を起こしているショウを自分の胸に抱き寄せ、苦笑いしながらショウの頭を撫でながら
大泣きして癇癪を起こしているショウに、どうしようとオロオロしているサクラとロゼに
「こんな感じだ。向こうのショウも素が俺らのショウだから、ダリアに対してもこんな感じで困らせているだろうと思う。
それにお前達は間違えてる。確かに、どの世界線であっても自分達は特別な関係でありたいという気持ちは分かるが。
お前達は、こちらのショウではなく“向こうのショウ”を愛しているのか?
まず、そこから考えてみてほしい。
“向こうのショウ”は、こちらの世界とは生まれ育った環境や状況が違う中で“俺やお前たちのいない世界”で生きている。
だから、根っこや芯の部分は同じでも、お前達が大好きなショウとは何かが違うはずだ。
そうだな。同じ人間であっても別の存在であるが分身ではない、別の人間だと考えてもいい。
そんな別の人間でもショウなら誰でもいいのか?ここに存在するショウを差し置いてまで、別の世界の別の人間であるショウと特別な存在になりたいというのか?
それは、確かに俺から見ても“浮気”にしか思えないな?
大好きなお前達に、そんな事を言われたショウの気持ちを考えての発言か?それなら、俺はお前達を軽蔑する。
そして、大切な愛娘を嫁にさせる訳にはいかないな。」
と、リュウキに言われた事で、理解が早いサクラとロゼはハッとし
「…ショウ様、申し訳ありません!そんなつもりではなかったのです。
…ただ、ショウ様と同じ姿形をし同じ魂を持った人間が、私以外の男性と恋人になっていた事。
その世界に私が存在しない事にショックを受けてしまったのです。
ですが!私がお仕えするのも恋人、結婚したいと思うのも私の目の前に居るショウ様しか考えられません。
別の世界のショウ様とどうにかなりたいとか、なろうとか一切考えてもないです。どうか、許してください!」
「お主様ぁ〜〜っ!
ちと、悔しゅうが我もサクラと同じ気持ちじゃぁ〜〜。
お主様の気持ちも考えられなかった事、ほんにすまぬと反省しておるゆえ許してはくれまいか?」
サクラは青ざめた顔をしてショウに綺麗な土下座を披露し今にも泣きそうになっているし、ロゼは図々しくもショウの顔面にヒシーっと抱きつきショウの顔にスゥーリスリして泣きながら、ごめんなさいと泣いていた。
サクラとロゼ、謝り方は全然違うが大袈裟すぎる所と必死さはソックリだなぁ〜と、みんな少々呆れ気味にサクラとロゼを見ていた。
だが、二人の熱意が通じたのかショウはホッペをぷくぅ〜と膨らませプンプン起こりながらも
「…うん、さっきのサクラとロゼの言葉とかショックだったけど。
…よく考えてみたら、向こうの私は向こうのサクラやロゼじゃなくて…ダリアと恋人なんだもんね。
それを知ったサクラやロゼの気持ち考えると、凄く嫌な気持ちになると思う。
私だって、向こうのショウがダリアと恋人だなんて信じられないし…ショックだけど。」
と、ショウは土下座するサクラの両頬を両手で挟み、自分と目が合うようにグイッと上を向かせロゼの方もチラッと見ると
「向こうは向こう!こっちはこっちだよ!私の天守で恋人は、サクラとロゼでしょ!!?
向こうのショウは違うでしょ!!」
なんて、怒りと嫉妬に任せてショウはビックリする発言をしてきたのだ。
その発言に、サクラやロゼだけでなくリュウキやオブシディアン、ゴウラン、シープまでもがビックリしてショウを凝視している。
