イケメン従者とおぶた姫。

コクレンは続けて話す。

「主様(あるじさま)の天守を決めるにあたってだけど。
それこそ偉大な主様の為に、同じ世界どころか異世界からも

主様の“運命人”

或いは

“運命人に近い人”

を集めたみたい。

…だから、ここにオレがいる。」


なんて、衝撃の話にみんな…闇の精霊王までもが酷く驚いていた。


「異世界者と言っても、異世界の鬼が核となっている世界だけだと思う。

他の異世界者はいないって考えてるよ。だって、この世界を創った創造主がその鬼の妻…男だけどね。その人なんだから。

この世界の創造主が住んでる異世界から、この世界に召喚されてもおかしくない話なんだと思う。」

と、言ってきたコクレンの話にだいぶ納得できる。

「そして、オレは主様にとっては
“おじいちゃん”だね。」

なんて、にっこり笑うコクレンだが、二人の容姿も似てなければ性格も何もかも似てない。

ショウには、コクレンの要素が何一つないように見えてサクラをはじめ、みんなコウレンを疑わしい目で見る事しかできなかった。

特にサクラは、ショウに深く関係する事なので慎重になっている。

「ちょっと複雑な話になっちゃうんだけど。主様にはお母さんがいるよね?

“主様が生まれたという事はもう、この世には居なくなって

【創造主の元に保管されてる】”

筈だから。」

と、少し悲しげな笑みを浮かべコクレンは意味深な事を話してきた。


ショウが生まれると、ショウの母親がこの世から居なくなる?

…創造主のところで保管???

どういう事だ?

コクレン言葉は謎だらけだ。

だから、みんな首を捻りはするが、気になる話ばかりなので黙ってコクレンの話を聞いている。

「オレは主様のお母さんのお父さん。
つまりは主様にとっては、おじいちゃんだよって話はさっきしたよね?」

と、ショウが頷いたのを確信して、ショウがきちんと理解できるようコクレンはゆっくり丁寧に説明をしている。

だから、あまりの話の進行の遅さに

サクラとオブシディアン、闇の精霊王、ヴォイド以外

みんな内心イライラしていた。


「けど、多分だけど。
オレと主様の何もかもがあまりに似てない事が気になってる人も多いと思う。
それに、主様にもしっかり知ってほしい事。」

と、話すコクレンにショウは少し緊張した面持ちで「うん」と、返事をした。

それを確認したコクレンは


「だいたいの人が想像した通り、オレと主様のお母さんとは血のつながりは無いよ。

だから関係性だけ問われれば、オレは主様のお母さんの育ての親って事になるね。

けど、血の繋がりなんて関係ない。

オレはあの子の事を実の子供だと思ってる。

だから、オレの娘から生まれた主様は、オレの大切な孫である事に違いないよ。」


そう言って、慈愛溢れる表情でショウに笑い掛けるコクレン。

ショウの母親とコクレンの血縁関係の事実に、ショウはもちろん他のみんなも驚くばかりで何といっていいのか。

この事について深追いするのは、コクレンのデリケートな話になるであろうからこれ以上聞く事が躊躇われた。


「多分だけど、オレはみんなが知りたがってる事の多くを知ってるかもしれない。

答えられるだけ答えるけど誰か質問はあるかな?

今は異世界の鬼や精霊王の動きが気になる。だから、時間がなくてあまり答えられないけど。」


と、話すコクエンに、ハッとしたように闇の精霊王は聞いた。


「あなたの正体も気になるが。
我々のいるこの世界を創った創造主様と異世界から来たという鬼はどんな存在なのか。まずは、そこが知りたい。」

その質問に、コクレンは

「まず、この世界の創造主は異世界者であり

“種族は魔族”【魔の祖】と呼ばれる【魔導やマナを司る者】。

異世界から来たという鬼はその名の通り

“種族は鬼族”【真の祖】といって【知と倫理を司る者】。

この二人は、この二人のいる異世界では三大核の二人でもあるんだ。

こんな話しちゃうと、長くなっちゃうし難しい話になっちゃうから簡単に言っちゃうと、二人は向こうの世界の創造主って感じかな?」


と、答えた。

悩みながら話してる所を見ると、色々と複雑な事情がありしっかり話せばえらく長くなるだろう想像だけはできた。
それを、ざっくりまとめた感じで話してくれたのだろう。


つまり、この世界の創造主は

鬼のいる異世界出身の者。
その異世界では、この世界の創造主と鬼ともう一人の三人揃っての

“その異世界での創造主”

でもあるという事になる。


以前、異世界の鬼と対面した時、鬼は自分達の住むこの世界の事を

“小さな世界”

だという事を仄めかしていた。

だから、三人の核たる存在が居なければならない程

“鬼達の住む異世界は膨大な規模の世界”

なのだろう。


なんだか、ちょっとカチンとくる話だ。

大きさより質だ!

と、言いたい気持ちになる。


「あ!気になってた事があるんだけど。

鬼がサクラやロゼ、ダリアの事を『妻』だの何だのおかしな事を言って、三人を連れ去ろうとしてた。

サクラ達が鬼の妻ってのは本当なの?

だけど、サクラ達は鬼の事なんて一切知らないみたいだし、むしろショウの事を結婚したいくらい大好きなんだ。

これって、どういう事なの?

鬼の勘違い?サクラ達に記憶がないだけ?

意味が分からないんだけど。」


と、コクレンの人柄だろう。
柔らかく優しげな雰囲気に、みんな一気にコクレンの好感が上がっていき少し気安い気持ちになっていた。

なので、質問もしやすくシープも気になってた事を初対面にも関わらず、コクレンにタメ口で質問していた。

それには、精霊王やオブシディアンはギョッとしシープを叱りつけようと口を開きかけたが、

それを察したコクレンは、精霊王達を見てフルフルと首を振りニッコリ笑うと“大丈夫だよ”と、精霊王達がシープを叱りつける事を制した。


それには精霊王達はたじろいだが、
コクレンが大丈夫と目で訴え掛けてきたので納得はできないもののそれに従って引き下がった。


だって、ヴォイドやクエーサーもそうだが、コクレンはショウの天守最終試験まで残った数少ない者。

ショウの星で三番目に高い地位を与えられている筈の者だ。

精霊王達よりもずっと地位が高く、
滅多にお目にかかれるような気安い人物ではないという事。

それをシープは全然分かってないのだ。

レベルが違う天上人達の話なので、オブシディアンやゴウラン、シープ知らなくて当然の事だが。

この世界において無知なゴウランやシープが何かしでかすのではと精霊王達やオブシディアンは気が気でない。

もちろん、オブシディアンだってゴウラン達と同じく天上人についての常識やルールなんて知らないだろうに、

周りの雰囲気や話す内容を聞いていて何となくだが分かってきているように感じ安心感がある。

むしろ、これだけで色々と察し話の内容にもしっかりついてこれているオブシディアンの適応能力や推察力、洞察力といった類稀なる能力に度肝を抜かされる。

本当に、とても優秀が過ぎる天才のようだ。

人間にしておくのが勿体ないくらいだと精霊王達をはじめ、コクレンやヴォイド、クエーサーもオブシディアンのあまりの有能さに、自分の部下として側にほしいと心から思った。


「この世界の創造主って名前が長ったらしいから、呼びやすいように魔族と呼ぶね。

うん。鬼と魔族(この世界の創造主)は、夫婦だよ。

だから、サクラやロゼ、ダリアと鬼は、夫婦でも恋人でもない。恋愛感情すらない事だけは言えるよ。」

と、言った事に、そこに居たみんなはホッと安心したように息を吐いた。

だが、それでも疑問だらけだ。

「…鬼が言ってたが、俺やエロ猫…ロゼ、クソゲスカスヤローのダリアは、元々一つだったのに三つに分かれてしまっている、なんてほざいてた。
それは、どういう事だ?」

サクラは、鬼が話していた内容で気持ち悪く思い引っかかっていた事を聞いてみた。すると

「…う〜ん。ちょっと、複雑な話になっちゃうんだけど。
三人で元々一つだったって話は本当。」

そう言った瞬間、サクラはショックのあまり膝から崩れ落ちそうになっていた。


「……は?じゃあ、鬼が言ってた

『妻が三つに分離してる』

って話も本当か?…なら、俺は…俺達は……」

元々陶器のように真白いサクラの顔がみるみる青ざめていき、不安からくる恐怖と寒気で全然が小刻みに震えてきた。腕には鳥肌まで立ってきた。

それをみて、コクレンは慌てたように


「ち、違う、違う!そこは違うよ、安心して。

魔族は三つに分離してないし、

【本体は異世界の誰も踏み入れない異空間】

にいるよ。……“マナ”以外はね。」


必死に訂正して、最後ボソッと意味深な事を吐き出していた。

そこに、ショウが

「…まな?」

首を傾げて、ショウのおじいちゃんを名乗るコクレンを見てきた。それに対しコクレンは

「…マナはね。主様のお母さんの名前だよ。」

と、小さな子供に語りかけるように優しく答えてくれた。

「…え!?でも、お父さんがね。
お母さんの名前は、“アクア”だって教えてくれたよ?」

ショウの父親であるリュウキとコクレン。

それぞれ、ショウの母親の名前が違う。
コクレンは、ショウの母親と誰か人違いしてるんだろうか?

頭を悩ませるショウに、コクレンは少し悲しそうに笑って

「…色々あってね。主様のお母さんは記憶喪失になって自分の本当の名前を忘れちゃったんだ。

だけど、名前が無いと困っちゃうよね?

だから、誰かが記憶喪失で自分の名前まで忘れちゃった主様のお母さんに新しい名前をつけてくれたんだね。」

と、説明された所でショウは、

なるほど!

と、理解した。そして、またまたショウの疑問。


「さっきから、ずっと私の事…

“あるじさま”

って、言ってるけどコクレンさんって、私のおじいちゃんなんだよね?
なのに、どうして私の事“あるじさま”なんて呼ぶの?」

そんな事を聞いてきた。

すると、コクレンは少し困った表情を浮かべながら、ショウに対し床に膝をついたまま答えた。

「身分が違うんだよ。」

「…身分?」

キョトーンと首を傾げるショウに

「そう、身分。主様はオレにとっては孫であるけど、オレの王様でもあるんだ。

だから、オレはおじいちゃんである前に主様の部下だからね。王様に失礼な態度はできないよね?

それに、いくらオレが主様のおじいちゃんでも…血の繋がりがないから、主様には気安くできないんだ。」


と、コクレンは仕方ない話だよねと苦笑いして見せた。

そんな事言われたって、王族だの地位だのちっとも分からないショウは全然納得できない。


「…え?でも、さっきは血の繋がりなんて関係ないって言ってたよ?嘘なの?」

だって、家族は血の繋がりなんて関係ないってさっき言ったばっかりなのに。

血の繋がりがないから、孫には気安くできないなんて意味が分からない。


「えっ!?マナの事に関しても、マナの娘である主様に対してもマナは、オレの本当の娘だし、主様も同じく本当の孫だよ!それは間違いない!

いくら血が繋がって無くたって、マナも主様もオレの大切な家族だよ。」

「……本当?」

コクレンの必死の言葉だが、ショウの不安は拭いきれない。

そして、コクレンの事を自分の祖父だと簡単に信じてしまったショウの警戒心の無さには、周りのみんなは不安でしかない。

「主様に誓って嘘はつかない。信じて?」

頑張って、なんとかショウに信じてもらおうと奮闘するコクレン。それでも

「……う〜ん。でも、やっぱり私のおじいちゃんだったら、私の部下とかなんか違う気がするよ?」

なんて、ショウの無知からくる疑問が止まらない。

「…それはね。ちょっと複雑で面倒な話になっちゃうんだけど。
それはどの世界の身分階層(カースト)においても、親や祖父母より子供の地位が高いと「…〜〜ん〜〜〜!!!分かんない。…ごめんね?
でも、私は王様でも何でもないから。
やっぱり、コクレンさんが私のおじいちゃんって言うのが本当なら……

“おじいちゃん”

って呼びたいな?」


なので、無知なショウにも分かりやすく説明し始めたコクレンの言葉を、もう頭がついていけないショウはギブアップとばかりに遮って自分の気持ちを話した。

「……え?」

思ってもみなかったショウからのおじいちゃんと呼びたいという申し出に、コクレンはビックリして思わずショウを凝視してしまった。

「おじいちゃんには、普通に名前を呼んで普通の孫として接してほしいな…?
…なんて、贅沢かな?
コクレンさんは、こんな出来損ないのデブスが孫…なんて嫌だから距離を置こうとしてるの?」


…トクン…

…え?

う、嘘っ!?

オレを主様の祖父と認めてくれただけでも奇跡だと思ってたのに!

それを受け入れて、おじいちゃんと呼びたい…?

オレは、祖父と孫として普通の祖父と孫として接して…いいの?

…え?

ドキドキ…!


ショウからの思ってもない嬉しい申し出に

「それは、絶対に違うよ!ショウちゃん…って、呼んでいいのかな?」

コクレンは、あまりに信じられない出来事にドキドキ緊張しながら再確認してみる。

「……っっっ!?…う、うん!
名前で呼んでもらえて、とーーーーーっても嬉しいっ!!ありがと!
私も、コクレンさんの事、おじいちゃんって呼んでいい?」

「………ッッッ!!?
も、もちろんだよ!まさか、主さ…いや、ショウちゃんに、おじいちゃんって呼んでもらえるなんて嬉しいよ!」


今日は、なんて嬉しい日なのだろうか?

今日、初めて孫に会ったし血の繋がりがない事を暴露した。

なのに、孫のショウはそれを受け入れ身分関係なく家族として接してほしいとまで言ってくれた。

あまりに嬉しすぎてジ〜ンと感動に震えていると、目の前で恥ずかしそうにモジモジしているショウの姿が映り、


どうしたのかなぁ〜?

なんて思っていると


「…じゃあ、ギュッてしてくれる?」

「…へ?」

思わぬショウの言葉に、コクレンは素っ頓狂な声を漏らしてしまった。

「……あのね。内緒だよ?

私ね。お父さんからギュッてハグしてもらうのも頭ナデナデされるのも大好きなの。

…なんだか、お父さんの子供なんだなって感じになって凄く心がぽかぽかするの。そこで、お父さんだなって思って大好きって気持ちが止まらなくなるんだ。

…訳わからないよね?でも、恥ずかしいからお父さんには内緒にしてね?」

恥ずかしそうにコクレンの様子を窺ってる様子のショウに

…ど、どうしよう…!

「…オレの孫がこんなにもかわいいっ!!!」

コクレンは嬉しさのあまり思わずギュッとショウを抱き締め、超重量級のまん丸な体を軽々と持ち上げると

「欲しいものがあったら何でも言ってね。

おじいちゃん、何でも買ってあげるし、好きなところに遊びにも連れちゃう!

ショウちゃん、可愛いね〜!本当に可愛いっ!!」

と、ショウの頬に頬擦りするコクレンの全身から、たくさんの孫が可愛くて仕方ないというハートがいっぱい飛び出してくる幻想が見えてくるようだ。

孫にデレデレの孫バカ爆誕の瞬間である。

しかし、こんなにも細っこい体のどこにそんな力があるのかと驚く。

そんな、感動の祖父と孫の初対面を邪魔する者が。

「…どうでもいいから、いい加減ショウ様を離せ…シテクダサイ。

ショウ様があなたの事を祖父と認めてしまったなら仕方ない…認めたくなくても認めざる得ない…デス。

デスガ、いくらお孫様のショウ様のお爺サマであっても、いくら何でも甘やかしすぎは良くアリマセンし……。

何よりショウ様は私の一番大切で尊い方、そして永遠の愛を捧げる伴侶としたい女性です。

…なので、あまり私の大事な人にベタベタ触られてはとても不愉快極まりアリマセン。」

と、ショウの事を可愛い、可愛いと頬擦りしてはナデナデしてハグをしたり、ショウを高い高いしてクルクル回ったりと可愛がってるコクレンと、嬉しそうにキャッキャはしゃいでるに

……ムスゥ〜ッと、あからさまに拗ねた顔をしたサクラが、楽しそうにキャッキャ戯れる祖父と孫の邪魔に入り、コクレンからショウを奪い返すと

外から帰って来て色んな匂いをつけてきたご主人様の匂いを自分の匂いで消そうとする様に、

“この方は俺だけのなの!!”

と、言わんばかりに、ショウをギュッと抱き締めスリスリ頬擦りしては頭やら頬にたくさんのキスを落としていた。

そんな、嫉妬丸出しのサクラにみんなドン引きで苦笑いするしかない。

ショウを奪われたコクレンも、そんなサクラの行動に苦笑いするもとても微笑ましい気持ちで二人の様子を見ていた。

ショウとサクラの様子を微笑ましそうに眺めつつ、コクレンは何かを思い出したようにハッとした表情をし


「…あ!時間がないなら最優先すべき事があったよ。ショウちゃんに会えた嬉しさですっかり忘れちゃってたけど。」

と、少し都合の悪い顔をしつつ

「ここに、ショウちゃんのお父さんを連れて来ていいかな?」

そう、言ってショウやサクラ、それぞれの精霊王達を見ると

「御子の父親も、大事な何かに関わっているのだろうか?」

闇の精霊王は、何故ショウの父親をこの神聖なる精霊王の城に連れてこなければならないのか疑問に思い聞いてみた。

それは、他の精霊王達も闇の精霊王の意見と一緒のようでジッとコクレンを見ている。

その様子に、少し小さく笑ったコクレンは

「関わるも何も。ショウちゃんのお父さんは、言わば

“この世界の父”

ショウちゃんのお父さんがいなきゃ、この世界はできてないよ。」


と、いうコクレンの言葉に各精霊王達とオブシディアンは酷く衝撃を受けた。

「その事についても、きちんと話したい。それに、何よりオレの娘であるマナについて、きっと知りたがってると思うんだ。

話が脱線して時間の無駄だと考えてる人達も多いかもしれないけど、これはこの世界ができるキッカケと異世界の鬼にも関わる重要な話でもあると思う。」

そこまで言われたら、許可するしかない。

これは、裏の世界に行き来できる鍵を使いショウの父親であるリュウキの元へ行き事情を説明した上で連れてこなければとそれぞれが考え、誰かがその事について口を開こうとした時だった。


いつの間にか、各精霊王達の目の前にはあからさまに地位が高いと分かる様な衣服を着たワイルド系の美丈夫が立っていた。

そして、すぐさまその美丈夫は王族にとって最高のマナーでお辞儀をして


「裏の世界より参りました、商工王国国王・龍鷹(りゅうき)です。

話はコクレン様より窺っております。

各精霊王様達のいらっしゃる神聖なる場所にお呼び下さり光栄に存じると共に、私にも大事な話を聞かせて頂ける事誠に感謝致します。」


と、敬意を払い何不備ない完璧な挨拶をしてきた。

コクレンが、みんなから許可を得て直ぐにリュウキがこの場に居たものだから、みんな驚きを隠せず

ショウやゴウラン、シープ、土、草の精霊王達、ヴォイド、クエーサーは

驚きのあまり奇声を発していたし、サクラでさえ小さく肩を飛び上がらせ短く声を出してしまっていた。

オブシディアンや闇の精霊王は、どうにか声を上げず我慢できたが内心は驚きで心臓バクバクで脳内はプチパニックである。


「みんな、驚かせてごめんね?

時間が勿体無いから、精霊王達に許可を取りながらリュウキ君にも簡潔な説明をしてここに来てくれるよう話をしてたんだ。

許可を得た瞬間に、オレがリュウキ君をここに召喚したんだ。

まさか、みんなこんなにビックリするとは思ってなかったから、一声掛けてからリュウキ君を召喚すれば良かったね。ごめんね?」

と、コクレンは言っていたが、その言葉に嘘は無いだろうが時間がないから分かりつつ実行したのは見え見えである。

だが、時間がない今、コクレンのこの行動はみんなにとってありがたい事だったので誰もコクレンの事を咎める者はいなかった。


それに、何なんだ?

力や能力を隠してるにしても、迎えに行くでもなく会った事もない相手を正確に見つけ出して召喚…いや、もっと色々と思うところがあるが。

コクレンは、異世界者だという。

今まで、精霊王や異世界の鬼について考えるだけで頭がいっぱいで考える余地もなかった。

今更ではあるが異世界者が、この世界に来て何らかの影響或いは弊害を受けてる可能性がある。

それぞれの精霊王とオブシディアンは、そんな事を考えていた時だった。いち早く、その事に触れた者がいた。


「不躾ではありますが、コクレン様はショウの天守試験の為、そして試験が終わると能力に合わせショウの部下になるよう異世界から召喚されて来たのだとか。

異世界での生活もあったでしょう。

そして、この世界に強制召喚された事により何か変化はありませんか?」

と、リュウキはみんなが今になって気になり聞きたかった事を迅速にかつ正確に質問したのだ。

すると、コクレンは少し困った表情で笑い


「うん、正直とても困ったよ。今も困ってると言っても過言ではないかな?」

と、言うと少し考えながら


「オレは異世界では、恐らくこの世界では【天】と似たような役職に居るって言ったらいいのかな?」

そんな事を言ったコクレンに、みんなが驚き固まっている。

「そして、ショウちゃんの天守試験で強制召喚されてこの世界に来た時、

“異世界から来たという事で色々な規制に引っ掛かってね。力や能力を大幅に封印されてしまった。”」


各精霊王達でさえできないようなとんでもない召喚やテレパシーを使っておきながら、それでもこの世界に来るにあたり大幅に力や能力を封印されたとなるとコクレンという男。

本来なら、どれほどまでの力の持ち主なのか未知数すぎて少しゾッとしてしまう。

「この世界に来た事によって色々あったけど、その話は時間もないしみんなも興味ないだろうから割愛させてもらうけど。

この世界に召喚されたとき、この世界から漂うエネルギーで直ぐにこの世界は何か分かった。」

この世界が何か分かった?

どういう事だろう?


「だけど、“彼の”目的や理由が分からなかった。

だから、身を潜め何が起きているのか窺っていたんだ。

それで、一番都合が良かったのが闇の精霊王の闇の中。

ここだと、自分は何者にも見つからず“奥さんの力”で色々と情報収集する事ができたんだ。」


と、まで話した所に

「…色々と分からない事が多くて、深く説明してほしい気持ちはあるんだけど。

まず、奥さんって何?

闇の精霊王の闇の中に隠れて色々と調べていたのはいいとして、奥さんの力って何?奥さんなんて、何処にも居ないじゃないの?」

草の精霊王は、色々突っ込みどころ満載の話に中でピンポイントに絞り質問した。

「うん。自分の世界で事前に、奥さんの能力で“強制召喚”されて異世界に飛ばされるって事を知っていたんだ。

だから、異世界での弊害の事も考えて“お互いに一緒にいる事を選んだオレ達だから苦肉の策で奥さんをオレの中に封じた。”」

「…奥さんを封じた?」

「…本当は、外に出してあげたいけど。“ある能力”と寿命以外は普通の人間と何ら変わりない女性だから、この世界に来る序盤で彼女は木っ端微塵になって消えちゃってたよね。

今、この場に彼女の封印を解いた瞬間に全身木っ端微塵。そんな恐ろしい事になっちゃうから、彼女はオレの中で守ってなきゃいけない。

…それもあってね。

ショウちゃんには、ごめんなんだけどオレの一番は奥さんなんだ。

だから、命懸けでショウちゃんを守る事はできない。だけど、ショウちゃんはオレと奥さんの可愛い孫。
出来る限りギリギリまで全力を尽くして守る事だけは約束できる。」


力を大幅に封印され、奥さんを異世界の異端なエネルギーから守りながら孫のショウにギリギリまで全力を尽くすと言ったコクレン。

…それだけでも、とんでもない人物だという事が分かるが異世界では、どれ程までの地位に居たのか気になる。

そんな前置きがあり、リュウキを加えてコクレンの話を聞く事となった。

リュウキが来た事により、ショウはとても嬉しそうにしていて

リュウキの顔をチラチラ見ては、照れて俯きを繰り返していてリュウキは、そんなショウの頭を優しく撫で微笑み掛けている。

そんな二人をショウの隣から、嫉妬深く不機嫌にリュウキを睨みつけるサクラがいた。

もちろん、そんなサクラには慣れっこだしあしらう事もお手の物なリュウキにとっては、そんなの痛くも痒くもない。

むしろ、羨ましいだろ?親の特権だとばかりにフンと鼻で笑ってやった。

いつも冷静沈着なサクラをおちょくって揶揄うのは性格の悪いリュウキの楽しみの一つである。

なんとも趣味が悪いとしか思えないが。


ここで、ようやくのようやくリュウキがショウの父親だという事を知ったゴウランは、ぶっ倒れるかという程の衝撃を受けていた。

最近、


何とな〜くそうなのかなぁ?

とか、オブシディアンのヒントの数々によって、それは確信に近くなってきたが、どうしてもショウとリュウキの親子関係を認めたくなく無理矢理否定し現実逃避していた所はあった。

だが、ここに来て

二人の普通の仲のいい親子な姿を見たら、現実を受け止めざる得ない。

あまりの衝撃とショックに、ポカーンとしているゴウランをよそにコクレンの話は始まる。