儚く消えてしまいそうな、それでいて海斗の心を惹きつける演技力。海斗にないものを彼女は持っている。

「一緒に踊ってみたい……!」

海斗は胸が高鳴っていくのを感じる。その感情に名前がつくのはもう少し後の話ーーー……。



それから数日後、海斗はドキドキしながらバレエ教室に入っていく。まだ練習が始まる一時間ほど前だ。

「来てくれたの」

海斗が教室に入ると、すでに練習着に着替えた志帆がバレエシューズを履いているところだった。

「もちろん!だってこんな大役初めてだから。ちょっとでもうまくなりたいし」

「なら着替えてきなさい。しっかり私が教えてあげる」

「うん!よろしくね」

海斗はそう言い、着替えるために更衣室へと向かう。今まで練習しているところを見ることしかできなかった志帆と練習ができる。それが海斗にとって緊張しながらも嬉しく感じていた。

再来月の大会で、海斗は志帆とペアで踊ることになった。踊る曲は白鳥の湖だ。