その女性は公園のベンチに腰掛け、俯いていた。頭を抱えているが、どうしたらいいのかなどわからない。

「お姉さん、どうしたの?」

声をかけられ、女性が顔を上げるとそこにはエプロンをつけたヘンゼルが立っていた。

「えっとね……」

女性が口を開こうとすると、ヘンゼルは「ストップ」と女性の口を手で押さえる。

「ここで言われても魔法のドルチェ持ってないから」

そう言い、ヘンゼルは呪文を唱える。そして女性をスイーツ店へ連れて行く。

「こ、ここは……」

戸惑う女性にヘンゼルはグレーテルにスイーツ店の説明を頼み、厨房を覗いた。

「ババーーー母さん、お客様が来た」

厨房では魔女である母親がハーブティーを作っているところだった。ババア、と言いかけたヘンゼルは母親に睨まれ、慌てて言い方を変える。

「あらそうなの!じゃあお話を聞かないとね」

母親はそう言って厨房を出て行った。普段はお客の悩みは母親が訊き、ヘンゼルとグレーテルがスイーツを用意している。