私は物心つく頃から高い塔の上に閉じ込められていた。

私を育ててくれたのは、恐ろしいほど美しい容姿をした魔法使いのお兄さん。栗色の髪に青いサファイアのような目をしている。

「ラナ、髪を解かしてあげる」

お兄さんがそう言い、よく私を膝の上に乗せて小さい頃から髪を解かしてくれていた。私は一度もお兄さんに髪を切ってもらっていない。だから、十年ほど経つ頃には私の金色の髪は地面につきそうなほど伸びていた。

「ラナ可愛いね。愛してるよ……」

お兄さんはよくそう言って私にキスをしてくれた。でも、お兄さん以外人を知らない私には恋や愛といった類のものは本の中でしか知らない。

一日中塔の中で勉強したり、髪を解かしたりして過ごしていた。これが一生続くんだって思い込んでた。でも、十八歳になったばかりのある日、私の前にお兄さん以外の人が現れたの。

「素敵な歌声だね。そっちに行ってもいいかな?」

グレーの髪に緑の目をした白馬に乗った男性がある日、私に声をかけてきた。初めて見た人に私は当然驚く。でも、興味の方が勝った。