(清水side)
「ねえ、コウキ、」
「ん?」
ぎゅーって俺にしがみつくミナは、だいぶこたえてるっぽかった。
こんなに甘えてくるのは、ちょっと久しぶりで、それを嬉しいって思ってしまう自分は、相当溺れてるし、相当馬鹿けている。
傷付いているのを見たくない。でも傷付いたミナしか、俺は知らない。
「………リュウ先輩すきなの、やめたほうがいい、かな」
───残酷な問いが、爆弾が、落とされる。
それに触れてしまったら、続きがなくなってしまう。それをわかっているから、何も出来なくて。
俺はただ優しいふりをするしかなくなる。
「どうして?そう思うの?」
ちっぽけな勇気すら持ち合わせていない。
そうだよ、やめろよって、言う簡単な勇気すら、俺は持っていない。
ミナの望む今を続けることしか、俺には残されていない。
否定しない。そうして作り上げた不健全なふたりを、俺は必死に続けている。


