君に毒針



「樋野で泣いてんの?リュウで泣いてんの?」

「………わかんないです、そんなの」

「そっか」



大きな手がすきだ。
安心を与えてくれるこの腕の中がすきだ。
傷付いたわたしを慰める優しい声がすきだ。

ここにある沢山のすきは、純粋なそれじゃない。だから、どれだけ集めても意味がない。だから、集めないようにしよう。

集めたって、虚しいだけ。



────こんなの、健全じゃない。わたしたちの毒は、とっくに回りきっている。