「今日は何?どーかしたの?」
靴を脱いだわたしを確認してから、とりあえず中に入ろう、と彼は優しくわたしの手を引いた。
傷付いた時、辛くなった時、彼はわたしに優しくしてくれる。甘やかしてくれる。その毒を、わたしは求めてしまっている。
「……樋野くんとデートしてきました」
「え?」
「さっき、バイバイしました」
部屋に入ってからぎゅうっと彼のことを抱きしめなおしてそう言えば、一瞬だけわたしの頭を撫でる優しい手が止まるけど。
その変化には気付かないふりをしたまま、わたしは証明するように言葉をつむぐ。
傷付いたわたしを、彼に証明する。


