君に毒針






「…っ、おい、どうしたの、」

「………どうもしてないです」



扉をあけられてすぐ、なだれ込むようにその腕の中に飛び込んだ。

心に空いた虚しさを、今すぐに埋めたかった。



「くるときは連絡してよ、片付けとかあるし」

「……コウキの部屋はいつも綺麗じゃん」

「こうやって誰かさんが突然くることがあるから、綺麗にしてんの」

「ふうん」



トントンって、わたしの頭を撫でる大きな手がすきだ。

この腕の中にずっと居られたら、幸せだろうなって何度思ったんだろう。
いつから、そう思ってるんだろう。