心の裏側まで見ようとする、樋野くんのそういところが苦手だ。
頑張って取り繕っているいつものわたしが、樋野くんの前だとただのハリボテになってしまって、嫌だ。
だから、すきの盾が消えてしまう。樋野くんの前だと、必死に武装した全部がなくなってしまう。
「リュウ先輩のすきなところ、」
復唱、する。だいすきな人の、だいすきでいる人の、だいすきでいなければいけない人の、だいすきなところ。
簡単なことを、考える。
考えないようにしていることを、無理やり考えさせる樋野くんのことが、今は嫌いだと思った。
ずっと逃げてきたのに。この先もずっと、逃げようと思っていたのに。
リュウ先輩のすきなところ。リュウ先輩をすきな理由。
たくさんある。たくさんあるから4年間もずっとすきで────
「………………リュウ先輩は…ずるいから……ずるい、人だから」


