君に毒針



「お酒飲めないのに居酒屋って変じゃない、かな?」



ちびちびと烏龍茶を口に含みながら、場違いな気がする周りに視線をやれば、「じゃあ、お酒飲めるようになったらまた一緒に来てください」と、至極当たり前かのように樋野くんは言う。



「……樋野くんが飲めるようになるのって随分先じゃん」



数年先の約束をするのはなんだか気が引けて。素直に、いいよ、と言えばいいのに逃げ腰でそう呟けば、

「うん、だから待ってて」

と、樋野くんは笑う。



ああ、本当に困る。サラっと息を吐くようにそんな発言しないでほしい。

動揺を隠すようにちょうど運ばれてきたポテトフライを口に運ぶと、「お腹すいてました?」と本当に心配しているみたいに樋野くんがわたしを見るから、余計に困ってしまった。



「先輩。俺、先輩に聞きたかったことあるんですけど」

「、?なに?」

「どうしてリュウ先輩のことすきなんですか?」

「……え?」