君に毒針



サクラにひっついてぐりぐり頬を寄せていたわたしの鼓膜が、突然だいすきな人の声で揺れた。
「えっ、えっ!?今、リュウ先輩呼びました!?呼びましたよね!?」と、早口言葉を唱えながら、急いでリュウ先輩の元へ駆け寄れば、ふっと少しだけリュウ先輩の口角が上がった。



「なんですか!どうしたんですか!すきになってくれましたか!」

「黙ってくんない?」

「だって!リュウ先輩がわたしの事呼んだんですよ!」

「いつも呼んでる」

「いつも呼んでません、1ヶ月に1回くらいです」

「…そんなん覚えてんのキモイ」

「えっ、嬉しいってことですか!?」

「日本語やり直して」



はあ、ってリュウ先輩が今日何度目かわかんかいため息をつく。

ため息ですら本当にかっこよくて困る。どうしてこんなにかっこいいの。


塩顔イケメンってたぶんリュウ先輩のための言葉なんだと思う。


目が少し細くて、でも小さくなくて、唇は薄くて、暗めの茶髪で、程よくセットされた髪型はギュンギュンどころか心臓発作。