樋野くんの存在は、色々な意味でわたしにとっては異質だった。
本来であれば、同じ学部の後輩で、同じサークルで、新歓で隣に座っただけの仲。
時たま講義で顔を見たり、サークルで顔を見たりして、なんとなく顔見知りにはなっても、それ以上にはならなかった、はず。
そう、たったそれだけで終わるはずだった。ただ樋野くんがあまりに変わり者だったから、こうしてわたしに変な興味かなにかを持って話しかけてくれている。
「で、ミナ先輩、いつ暇なんですか?」
「今暇だよ?空きコマだから」
「そういう暇じゃない」
「えっと、どういう暇?」
首を傾げて樋野くんを見れば、彼はわかりやすく怠そうにため息をついてから、「だから、さあ、」と言い淀んで。
それから、わたしの苦手な熱を帯びた視線。
「もうすぐ6月じゃん」
「………うん?まあ、そうだね?」
「だから、行きませんか、デート」
「…………は!?」


