「えー、なに。頼れる先輩に相談したいってこと!?」
気持ちの揺れが、動揺が伝わらないように。
先輩として、いつものわたしで返事を返せば、樋野くんは、再び不機嫌そうな表情を見せる。
「ミナ先輩ほど、頼れない先輩いないです」
「えっ、褒め言葉?」
「いや、貶してる」
「………樋野くんひっど」
唇を尖らせて抗議すれば、そんなわたしを見て樋野くんは柔らかく笑う。
初めて会った時よりも、樋野くんは表情豊かになった、ような。そんな気がして、少し嬉しい。
思えば、こうして楽しく話せる後輩、それも異性の後輩なんて、人生で初めてかもしれない。
わたしは、リュウ先輩というイレギュラーを除いて、歳の違う人に自ら率先して話しかけるタイプではないし、清水先輩のように後輩から慕われて好かれるタイプでもない。


