「……木下先輩って腹立つ」
そんな彼女たちの背中を何も言えずに見送っていたわたしの耳に、不機嫌そうな樋野くんの発言が届く。
なぜ腹立つ?と疑問符と共に樋野くんを見遣れば、「こっちの話です」と、わたしはどうやら仲間はずれなよう。
それどころか、わたしの知らないうちにだいぶ仲良くなっていたらしいサクラと樋野くんは、わたしにはわからない謎のアイコンタクトをしていて。
仲良すぎじゃん、なんて思っていたのに、樋野くんはサクラのそれに対して大きくため息をつくから、一体どういうことなのか余計に分からなくなる
「…まあ、いいんですけど。ふたりになりたかったし」
「ふたり?」
「ミナ先輩とふたり」
──また、この視線。
BBQの日から樋野くんがときおり見せるこの熱っぽい視線が、わたしはかなり苦手だった。
どういう反応を返すのが正解なのかわからなくて、わかりやすく困った反応を返すけれど、樋野くんはなんにも気にかけてはくれない。


