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────チリリリリリリリ
朝を告げる無機質な音で目が覚める。
頬には生暖かい水滴。懐かしい夢を見ていたような気がする。
夢、なんてものは起きて時間が経てば忘れてしまうような儚いもので、意味も理由もないはずなのに。
悲しいとか虚しいとか、そんな思いだけ残して消えるんだから、本当にタチが悪い。
ベットから起き上がってんーっと背伸びをすれば、ちょっとだけ気分が晴れやかになる気がした。
こういう虚しさが残る朝は、ずるいわたしが顔を出すから嫌だ。
つい数日前の甘い毒を思い出して、胸の奥がきゅっとなった。
あの腕の中で眠る日は、あの腕の中で迎える朝は、ひとりの朝より心地いい。
嫌な夢を見たとしても、虚しさが心を埋めつくしたとしても、温もりに触れるだけで全部消えていくから。


