君に毒針



こんな感情は、初めてだったからわからなかった。

ぐるぐる自問自答する暇もなくて、今言わないと逃げちゃう気がして、早く伝えないといけなくて。



「すきですっ!……たぶん」

「……?」

「っ…わかんないけど、あの、先輩のこと、なんにも知らないけど、なんか、あの、」

「これ、あげる」

「っ、!?」



先輩が、わたしに向かってさっきまで使っていた折りたたみ傘を投げた。

まだ濡れていて、冷たいそれを。



「明日返しに来てよ、」

「え?」

「傘。そしたら、また話せるよ?」

「………っ…!」