(神楽side)
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あの日は雨だった。
高校生になってウキウキで、まだローファーが痛いような、そんな季節。
どうしてあんな時間まで学校に居たのか、今になっては思い出せなくて、わたしの都合のいい頭は、全部先輩に出会うためだったんじゃないかって思い始めてるんだ。
「……入りなよ」
玄関で立ち尽くすわたしに、素っ気ないようなどこか優しいようなそんな声をかけたのは、初めて見る顔で。
端正な顔立ちに一瞬で心が掴まれた。
「傘、無いんじゃないの?」
時が止まったみたいに固まるわたしになんて構わずに、先輩は話を続けてて。
でも、頭がパンクしそうになってるわたしは、そんな声届かなくて。
雨の音が止まっているような気がしていた。
ポツポツっていう水音が消えて、世界がわたしと彼だけになったような感覚。


