君に毒針



真っ直ぐでいようとするミナを、もっとどろどろに溶かしてやりたい。

本当は、拒まれたって無理やりキスのひとつでもしてやりたい。

そうやって、間違った方法でいいから、俺のことを意識して欲しい。


樋野のところになんか、行かないで欲しい。
俺の方がずっと前から、ミナのこと見てるから。


ミナが弱音をはけるところは、この先もずっと俺であればいいのに。

リュウに傷つけられて、泣きたくなった時に頼れる場所は、俺だけでいい。俺だけがいい。



「………だせえ、ほんと」



こんなのは、間違ってる。そんなことは、ずっと前から分かってる。

すきならすきって言ってしまえばいい。
抱きしめるんじゃなくて、ただ一言、素直に口に出すだけだ。


リュウじゃなくて俺にしてよって。俺はずっとミナのことがすきだって。言うだけなのに。

俺はいつも、何も言えないまま。
ミナが求めていないことを言えない。求めていることしか言えない。リュウへの片思いを延命させる言葉以外言えない。
壊す勇気がない。進む勇気がない。



ミナの気持ちに答える気はないくせに、ミナが傷付いたタイミングで、ミナの気持ちがほんのすこしでも離れていこうとするタイミングで、わざと優しくするリュウが、嫌だ。

この間だって、わざと飯に誘ったこと、俺はわかってる。

いつも離れていくギリギリのところで繋ぎ止めて、余裕なフリして笑ってる、リュウのそういうところ、羨ましくて憎い。