君に毒針



どす黒い感情がグルグル回る。

樋野と仲良さそうに話すミナが視界に入ってから、もうずっとこんな調子だった。
頭の中に場違いな独占欲が渦巻いていて、苦しい。


樋野がミナへ向ける視線が、真っ直ぐで、綺麗で、眩しかった。
俺が出来なかった方法でミナにぶつかる樋野が、羨ましいとさえ思っていた。


真っ白なミナには、樋野みたいな存在が必要だったんだと思う。
俺でも、リュウでもない。俺たちは、ミナにとっては呪いだ。


俺が邪魔なんてしなければ。こうやって、毒なんて与えなければ。
ミナはリュウじゃなくて樋野のことをすきになるかもしれないし、一方通行の虚しさを重ねた俺たちの片思いが終わるのかもしれない。


───だけど、そんなの、耐えられないだろ。




こんなことになるなら、樋野のことサークルになんて誘うんじゃなかった。

体験に来ましたって入ってきたアイツのこと、センスいいねとか、褒めてた1か月前の俺は人生最大の過ちをしたんだ。


新歓の席順だって。どこでもいいって言う樋野のこと、ミナの隣になんて座らせるんじゃなかった。