「ミナ先輩。とりあえず、行こ」
「えっ?」
「せっかく来たんだから、肉のひとつくらい焼きましょーよってこと」
腕を掴んでいた手のひらを離してから、すぐに先輩の手を握り直して。
テントの日陰から太陽の下へとふたりでくり出せば、暑さにやられてクラクラしそうだった。
「あの、樋野くん、わたしひとりでも歩けますけども、」
ちいさな白い手を引いて歩き出した俺の背中に、予想の斜め上の言葉をかけてくる先輩はやっぱり変だ。
別に俺、先輩の歩行を補助するつもりで手握ってるわけじゃないです、と。かっこ悪い言葉がでかかる前に、ぎゅっと強く手のひらを握り直せば、「…ひとりで、歩けるのに」と先輩は往生際悪く再び呟く。
「先輩、手ちっちゃいんですね」
「え?」
「…なんでもないです、べつに」
太陽の暑さが、伝染していた。
ばかみたいに全力で恋をする先輩は、どうしたらこっち向いてくれるんですか?
あとすこしで俺は俺の片思いを認められると思うから。
そうしたら、聞いてもいい?


