(樋野side)
「…………へ?」
真っ直ぐに先輩のことをとらえれば、先輩の大きな瞳がすこし揺れた。
俺だって何でか全然わかんないよ。
大勢で集まるのは嫌いだった。今も嫌い。
インドア派だからBBQとか、絶対行かないタイプだったのに、リュウ先輩、とやらに釣られて手を挙げたばかな人を見ていたら、俺も一緒にばかになっていた。
まだ会ってほんの少ししか経ってない。
恋になるにははやすぎる。だから、絶対違うって証明するために、ひとりでいる先輩にわざと近寄ったのに。
いざ先輩の隣に座ったら、沢山作り出した言い訳たちが一瞬で木っ端微塵になっていた。
どうしたって気になって仕方ない。否定出来る理由を探しているのに、ひとつだって見つかってくれない。
リュウ先輩に真っ直ぐで、リュウ先輩で傷付いて、リュウ先輩で泣きそうになっている先輩が、危なっかしくて放っておけない。放っておきたくない。
今日だって、また泣きそうな顔をして、リュウ先輩を見つめてる。
隣にいる俺なんか全然視界に入ってなくて、ずっとリュウ先輩を見つめている。
「いまはまだ違うけど、なんとなくそうなる気がしてる」
木っ端微塵になった言い訳たちを必死にかき集めてそう捻り出す。
言い訳未満のそれはひどく滑稽だったけれど、ミナ先輩にはどう伝わっているんだろう。
知りたいような、知りたくないような。そんなふわふわした気持ちが、俺の中にはいた。
「……樋野くんの文に目的語がないから、わかんない」
「それワザと」
「なんだそれ」


